まだ世界一の純債権国でデジタル通貨の議論が活発化した今こそ「円の国際化」の議論を
2020年01月31日
今年も年初から金融市場に衝撃が走った。
1月3日、米国防省は、トランプ大統領の命令によりイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したと発表した。これに対し、イランの最高指導者ハメネイ師は報復を宣言、米国とイランを巡る情勢は一気に緊張が高まった。
ドル円相場は、それまで米中摩擦の一時停止により1ドル=109円前後まで円安方向に振れていたが、このニュースに続き、8日のイランによる米軍基地へのミサイル攻撃を受けて、一時107円台まで円高が進んだ。ただ、その後は米国、イランとも本格的な軍事衝突を望まないことが確認されたこともあり、すぐに円安方向へ反転、110円台まで円安が進んだ。
昨年8月にトランプ大統領が対中追加関税の第4弾を決めた時も、ドル円相場は109円台から一時104円台まで円高が進んだ。しかしながら、9月1日に予定通り追加関税第4弾が実施された頃には106円台へ戻しており、その後、米中交渉の行き詰まりが報じられても円相場は105円台にすら振れることはなく、円高阻止のための日銀の追加緩和議論も虚しく、円は水準を徐々に切り下げて行った。
最近の中国における新型肺炎も、景気底入れが期待された中国経済を再び落ち込ませそうな状況となりつつあり、金融市場では再びリスクへの警戒が強まってドル円相場は110円台からじりじりと円高が進んでいる。ただ、悪影響の広がりが日々伝わる中で、円高が加速するには至っていない。
かつては、金融市場でリスク警戒感が強まれば、「有事の円買い」により大きく円高が進んだ。ところが最近は、このように小幅かつ短期間の円高にとどまることが多い。第一の原因は、現在の日米の経済ファンダメンタルズが円安を促していることであろう。
ドル円相場を左右する主な経済ファンダメンタルズは、日米の金利差と経常収支である。
日米の金利差は、政策金利で比較すれば米国が1.50~1.75%、日本は▲0.1%であり、米国の金利の方が圧倒的に高い。経済理論に基づくと、物価上昇分を除いた実質(名目金利-物価上昇率)で比較する方が望ましいが、それでも米国は概ねゼロ%程度、日本は▲1.0%程度であり、やはり米国の方が高い。長期金利(国債10年物利回り)で比較しても、米国は1%台半ば、日本は小幅マイナスであり、結果は同じである。
また経常収支は、ドル円相場の場合、日本の数字が特に意識され、黒字幅が大きいほど円高圧力が強いとされる。黒字が大きいほど海外からの受け取りが支払いより大きく、それだけ外貨を売って円に交換する量も大きくなるという考えに基づく。日本の経常黒字は、2019年1年間で20兆円程度、GDPの4%近くに上る見込みである。一般的にGDPの3%を超えると過大とされており、経常黒字の規模だけを見れば結構な円高圧力である。
ただ、日本の経常黒字のほぼ全ては「所得収支」と呼ばれる投資の収益であり、
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