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EUを離脱した英国の切り札「漁業カード」

英国はブレグジットで影響力を落としても経済的には悪い話ばかりではない

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

2020年移行期間の交渉はどうなる?

 このため、これから行われるEUとの交渉に関心が集まっている。

 EUからは、EUと同等の労働や環境等の規制水準を採用することをイギリスが約束しなければ、関税ゼロでのアクセスは認めないという the level playing field の議論が出ている。日本とEUの交渉は4年もかかったことを踏まえ、1年以内で交渉をまとめることは困難だという発言が相次いでいる。

 イギリスを競争相手とみて、その力を削ぎたいという意図もうかがえる。

 すでにメルケル独首相も、イギリスは競争相手となると主張している。また、EU加盟国の首脳からは、経済規模の大きいEUはイギリスを交渉で圧倒できるという発言も出ている。

 金融サービスについては、EUを含むヨーロッパ経済領域内のどこか1か国で認可されれば、領域内のどの国でも自由に金融業を営むことができる「シングルパスポート」という制度がある。このため、金融機関の多くがシティのあるロンドンにヨーロッパでの事業拠点を置いている。しかし、離脱後EUがイギリスにこの制度を認めるかが問題である。

 EUが結んでいる自由貿易協定の中の金融サービスでは、EUと同等の規制を行っている国に限りEUへのアクセスを認めるという同等性評価(equivalence assessment)を要求している。イギリスの金融制度にEUとの同等性を認めるかが争点となる。

イギリスの強み

 しかし、イギリスはそんなに弱い立場なのだろうか?

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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