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新型コロナウイルス、感染対策以外に必要なもう一つの視点

アンガーマネジメントの専門家、横浜市立大学医学部看護学科講師に聞く

岩崎賢一 朝日新聞記者

衝動的な対応が失敗を招く

――1次感情は、今回の場合、不安です。

 怒りは2次感情で、怒りの背後に隠れている1次感情が今回の例でいえば怒っている人の背後には不安や恐怖があるという人も多いと思います。自分や身近な人が感染したらどうしようという不安から、関連のニュースを読みあさり、対策にヤキモキする人もいると思います。

 ほかにも仕事に影響が生じる、予定の変更を余儀なくされることで「困惑」する、あるいは楽しみにしていたイベントが中止になって「残念」「落胆」などがあります。

――経過観察をしている人に、仕事としてサービスを提供している人たちがいます。医師が適切な説明をしたうえで、感染リスクを下げて仕事に従事していますが、ストレスはかかりますし、部屋で待機させられている人たちとの間の、ちょっとした言葉の行き違いなどから感情があらわになることもあるでしょう。

 ストレスの高い状況においては、気持ち余裕がなくなります。実際、売り言葉に買い言葉で失敗する可能性が誰にでもあります。状況がみえないなかで質問攻めにあう、忙しいところに様々な要求がくる、ときには怒りをぶつけられたりして、「俺たちだって大変な思いをしてやっているんだ」と勢いで言いたくなる場面もあるかもしれません。災害現場などでも混乱のなかで「自分たちだって寝ていないんだ」と言いたくなるようなときがありますよね。しかし実際に感情的に対応してしまえば、後で職員としての対応がまずかったと自分を責めることになりかねません。

 アンガーマネジメントのポイントは、「衝動」と「思考」と「行動」をどうコントロールできるかにあるとも言えます。この衝動のコントロールは、まさに売り言葉に買い言葉にならないようにということを意味しています。

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――その場ですぐ返さないということですか。

 感情にまかせて反射的に言い返しそうになったときに、ちょっとこらえることができれば、冷静に言葉を選んで対応できます。

 こうしたことは日常生活の中でもあります。仕事でも、子育てでも、あおり運転もそうです。ちょっとしたきっかけでプチンと切れてしまう人がいます。「つい」「かっとして」「いらっとして」とか、「頭が真っ白になって」とか。まさに「衝動」の部分です。そういうときに、ちょっと冷静になって対処することが大切です。

 冷静になって考えてみると、怒る必要のないこともあるものです。

新型コロナウイルス対策で必要なもう一つの視点拡大横浜港の大黒ふ頭に停泊するダイヤモンド・プリンセス号。入国していない状態のため、患者の統計でも区別されている=2020年2月13日、岩崎撮影

思考の整理ができるようになろう

――思考の整理ができるようになるといいわけですね。

 自分の思考として、何が怒りやイライラにつながっているかが見えてくると、整理しやすくなります。
怒りは理想的な状態や期待とそうでない現実とのギャップが引き金になると考えられます。安全だと思っていた国が見えないウイルスの脅威にさらされている、出張や旅行の予定が中止を余儀なくされる、少し前までは考えられないような仕事への影響が生じているなどの現実です。

 思考パターンの整理ができるようになってくると、ニュースを見聞きしていて色々不安がわき起こっても、他人に怒りをぶつけたり、攻撃したりすることが適切な方法でないということに気付くことができます。人によって状況も違いますし、同じ状況においても怒りの引き金をひく人もいれば、そうでない人もいます。自分の感情は他の誰でもなく、自分自身が選んでいるのです。

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筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞記者

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当を経て、現在はオピニオン編集部で「論座」編集を担当。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

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