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新型コロナウイルス、感染対策以外に必要なもう一つの視点

アンガーマネジメントの専門家、横浜市立大学医学部看護学科講師に聞く

岩崎賢一 朝日新聞バーティカルメディア・エディター

ストレス対処法の引き出し多いことが大切

――心身のバランスを崩さないようにするために、部屋の中で待機するように言われている人たちと、その対応をする人たちとは、どのように感情をコントロールすればいいのでしょうか。

 突然生活を制限された人も、緊急で対応しなければならない人も、大変な状況のなかではイライラしやすくなる、いわば怒りがわいてくることは、自然なことだと思います。しかし、同じ状況でもコントロールできる人とできない人がいます。「これは自分自身の不安なのだ」と気付けるかどうかで目の前の人に対する対応が変わってくると思います。

 例えば、市中のレストランで食事をして、隣向こうのテーブルに外国人がいたというだけで店員を呼びつけてクレームを付けるとか、無関係な人を排除しようとするのは違うんじゃないかと自分自身で気付けるようになることです。

 私はいま不安だから、外に出るのを少し控えよう、といった思考ができていればいいと思います。

――保育園に子どもを預けて共働きしている若い世代は、子どもの感染対策でも不安を感じています。「じゃあ、どうしたらいいのか」が分からないため、不安を募らせたり、不正確な情報に振り回されたりしている人がいます。

 実際にマスクは咳エチケットとしての拡散防止はあったとしても、予防効果には疑問符が付けられています。子どもはどうしてもマスクに触ってしまうし、大人でもマスクがあごにずれて、鼻が出ている人がいます。マスクをすることを重視するのは、親の不安からきていると思います。マスクは1回外した時点で捨てないといけません。そうしたことを幼い子たちに強いるのは不可能ですし、ストレスになってしまう子どももいるでしょう。いつもより丁寧に手を洗うなど、多くの情報のなかから自分にできる対策を見極めることも必要です。

新型コロナウイルス対策で必要なもう一つの視点拡大マスクとレインコートを着て買い物をする女性=2020年2月10日、中国・武漢(AP)

――いくら水際対策を強化したとしても、鎖国はできないし、無菌状態の社会に生きることもできません。

 日ごろから、ストレスの対処法をたくさん持っている人は、柔軟に対応できるのではないでしょうか。いまなら人混みに出かけるのが不安だと思えば、じゃあ外出しないで本を読もうか、などと今そこでできることを考えるでしょう。ストレス発散法が出かけることしかないという人は、部屋から外に出られないとストレス対処法がないことになります。ストレス対処が上手な人はバリエーションをいくつも持っています。好きな飲み物や食べもの、音楽でも、ゲームでも、自分にとっての息抜きや楽しみの選択肢を増やしておくと良いと思います。

新型コロナウイルス対策で必要なもう一つの視点拡大スーパーでの買い物に、レインコートとマスクをして出掛ける人たち=2020年2月10日、中国・武漢(AP)

情報統制できない時代だからこそ必要なこと

――心配、不安を取り除くには、情報が世の中にあふれている時代だからこそ、整理をすることが大事だし、情報を出す側も整理をして出すことが大切になるということですか。

 マスメディアの立場だと、「正しい情報を」ということは大切なことなのでしょう。しかし、世の中にあふれている情報は、それだけではありません。誰でも情報を発信できる時代ですし、そうした情報を統制することはできません。情報を受け取る側が、情報のリテラシーを高め、情報に振る舞わされないようにすることが大切になります。

 例えば、誰かから「ニュースでこう言っていたよ」という内容を受け取っても、あまりに信憑性がなく実際それが事実でないことが分かったら、裏切られたと感じてイライラしてしまいますよね。

――現代は、誰でも情報を発信できるSNSの時代です。匿名でも自分の気持ちを吐露することができます。

 匿名で誰かを攻撃して怒りを発散する対処法は、自分が安全なところにいて他人を攻撃できるので手軽かもしれませんが、他人を傷つけながら自分の感情をコントロールしていくので長期的に見れば発散する側にとっても不健康だと思います。感染症に限らず、どんなニュースに対しても同じだと思います。

 終息するまでに時間はかかります。とりあえず毒を吐いて発散すればいいと考えるのではなく、自分ができることを冷静に考えられるようになることが必要だと思います。

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筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞バーティカルメディア・エディター

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当、オピニオン編集部「論座」編集を担当を経て、2020年4月からメディアデザインセンターのバーティカルメディア・エディター。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

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