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親会社ヤフーから株主の利益を守る「アスクルモデル」は普及するか

アスクルが画期的な試み。日本のコーポレート・ガバナンスの向上に一石を投じる

加藤裕則 朝日新聞記者

 オフィス用品大手アスクルは2月5日、新たな取締役会の体制を発表した。

 昨夏、親会社のヤフー(現・Zホールディングス)とのあつれきで社長が解任されたほか、独立社外取締役の選任議案も否決され、経営者を監視する独立社外取締役がゼロというコーポレート・ガバナンス(企業統治)のうえで異常な状態が続いていた。

 今回の新体制はこの解消を図ったもので、当時の反省から、徹底的な選考手続きの透明化に挑んだ。

 この「アスクルモデル」(同社関係者)という手法が今後、日本社会に普及するか注目を集めている。全体としては形式論にとどまっていた日本のコーポレート・ガバナンスだが、実質的に機能し始める可能性がある。

社外取締役候補の「抱負文」

アスクル拡大記者会見で独立社外取締役の選考方法を説明するアスクルの指名・報酬委員会(暫定)の委員長を務めた国広正弁護士(写真左)と、委員の落合誠一・東京大名誉教授

 2月7日午後、アスクルの指名・報酬委員会(暫定)の委員長を務めた国広正弁護士と、委員の落合誠一・東大名誉教授が東京都内で記者会見した。2日前に発表した新たな独立社外取締役の候補4人を選んだ経過を説明し、記者との質疑に応じた。

 国広弁護士によると、第一段階として30人のリストを作成したことから選考作業を始めた。この中から実際に接触するなどして4人に絞りこんでいったという。

 この4人には、あえてZホールディングスの経営者や、昨夏に同社から解任された元独立社外取締役の斉藤惇・日本野球機構コミッショナーらとも面談して意見を交わし、コーポレート・ガバナンス上の問題点を自ら理解・納得したうえで、候補になってもらったという。

 そのうえで今回、目を引いたのは、正式に選ばれる3月13日の臨時株主総会に向けた4人の「抱負文」だ。

 4人は、コーポレート・ガバナンスやコンプライアンスに詳しい弁護士の市毛由美子、電子商取引の経験が豊かな後藤玄利、コーポレート・ガバナンスの知見を持つ麗澤大教授で内閣府消費者委員会委員長の経験もある高巌、元IHI副社長の塚原一男の各氏。

 4人とも1500字前後とそれなりの分量をアスクルを通じて公表した。このうち一人、塚原一男・元IHI副社長は「やるべきことは2つ」と明示した。

 一つは、赤字が続く個人向けネット通販のロハコ事業を中心とした経営戦略の策定。もう一つは、コーポレート・ガバナンスの再構築で、主要株主と経営陣が信頼関係を築くことが大切だと説き、対話を促した。

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筆者

加藤裕則

加藤裕則(かとう・ひろのり) 朝日新聞記者

1965年10月、秋田県生まれ。岩手大人文社会科学部卒業。1989年4月に朝日新聞社入社。静岡支局や浦和支局(現さいたま総局)などに赴任した後、1999年東京本社経済部員。その後、名古屋や大阪でも経済記者を務めた。経済部では通産省(現・経産省)、鉄鋼業界、トヨタ自動車(名古屋)、関西空港・神戸港などを取材した。コーポレート・ガバナンスや会計監査について自主的に取材を重ねてきた。2014年9月から石巻支局員として東日本大震災からの復興の過程を取材。2018年4月から東京本社の経済部員として経団連などを担当している。

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