メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

追い詰められる医療現場 新型コロナ治療最前線医師に聞く、医療崩壊を防ぐポイント

国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長に聞く

岩崎賢一 朝日新聞バーティカルメディア・エディター

医療機関は軽症患者を受け入れる準備を

――国立国際医療研究センターの総合感染症科の外来では他の医療機関から蓋然性の低い患者が紹介されてきたり、ウォークイン(紹介状なしで来ること)で来たりする患者が増えているそうですね。

 医療機関として信用があることはうれしいことですが、みんなが風邪をひいたとき、病院に押し寄せたらどういうことが起きるか、考えてみて下さい。まず医療スタッフがパンクしてしまいます。もう一つは、病院に来ることによる感染リスクをよく考えて欲しいと思います。

 例えば、2月下旬のある日、不安で総合感染症科の外来に来た人が10人いました。そのうち新型コロナウイルスの感染者は1人でした。比率は低いのですが、それだけの問題ではありません。当病院では、患者がどんな病気かわからないので、患者同士で病気をうつさないようにするため、一人一人をパーティションで区切っています。しかし、どこの医療機関でもそれができる環境にあるわけではありません。

 病院に来たためにはずみでうつされることが起こりうるということです。病院が混雑すれば混雑するほど、感染リスクは高まります。これは、MERS(中東呼吸器症候群)のときに韓国で起こったことです。救急外来がものすごく混雑し、そこで咳をする若い患者がいました。ひざがぶつかるか、ぶつからないかぐらいの待合室の距離の中で感染者が増えていってしまったのです。

新型コロナウイルスで医療崩壊を起こさないためにやるべきこと拡大国立国際医療研究センター病院=岩崎撮影

感染症指定医療機関のスタッフは限界に

――日本の感染症指定医療機関で、いま何が起きているのでしょうか。

 一つは軽い患者が外来に押しかけています。もう一つは、症状のあるなしにかかわらず、PCR検査で陽性になった人は感染症指定医療機関に入院しているので、感染症病床が埋まってきています。そこで起きているのが、人手不足の問題です。

 患者の中に肺炎があるとか、人工呼吸器が必要だとか、さらに人工心肺が必要だとかということになると、とても多くの医療スタッフが必要になります。武漢からチャーター機が日本に戻ってからこの状態が続いています。現場の医療スタッフには疲れもたまってきています。

準備ができていなければ「拒絶モード」も仕方がない

――大曲さんがメンバーの東京都の会議でも、感染症指定医療機関だけでなく、一般の医療機関で診てくれないとアウトブレークしたときに厳しいという臨床医の発言がニュースになっていました。

 小池百合子都知事の前で申し上げました。「感染症指定医療機関ではキャパシティーの上限まで来ています」と。ただ、一般病院の医師や開業医の人たちは、気持ちの準備ができていないし、ノウハウもわからないので、基本的には拒絶モードです。それは仕方がない面があります。

 受け入れて頂くには、気持ちの準備からロジの準備まで時間がかかるということです。今からアラートをかけ、なるべく早く一般の医療機関でも診てもらうようにするのが、東京都がとるべき方向性だと思います。

・・・ログインして読む
(残り:約5049文字/本文:約8791文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞バーティカルメディア・エディター

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当、オピニオン編集部「論座」編集を担当を経て、2020年4月からメディアデザインセンターのバーティカルメディア・エディター。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

岩崎賢一の記事

もっと見る