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高齢化まっしぐらの東京へ、若い女性たちがなだれ込む

ブラックホール東京。人・企業・行政の一極集中はハイリスク

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

仕事を求める若者、とりわけ女性が東京を目指す

 規制の実効性について、筆者は疑問を感じる。

 例えば東北地方にとって、東京は新幹線でつながる身近な大都市である。進学で東京への転入を抑制しても、就職の際に大量流入するから、結局は同じことになるのだ。

 東北には保育士や介護福祉士を養成する短期大学がいくつもあるが、その在学生に対して、東京のリクルーターが猛烈なアタックをかけている。

 「保育士なら月給30万円出します。あこがれの東京で働きませんか」

拡大東京圏は保育士不足。駅のホームにも募集ポスターが=横浜市内で

 若い女性の転出は、出身県の将来の少子化に直接つながる。なぜ、これほど多くの女性が生まれ故郷を捨てて東京に行くのだろうか。

 山形県では昨年、2427人の女性が転出超過で総数の58%に上った。ある中小企業経営者は、「重い数字だ。仕事の場では男女機会均等が浸透してきたが、子育てや介護は依然女性に責任がかかる。地域おこしも男性が中心。ふるい地域社会のあり様が嫌われているのだろう」と分析する。

 秋田には国際教養大学という、授業は全部英語という県立大学がある。だが、ここも男女を問わず、県の税金で育てたグルーバル人材は東京の大企業に就職し、秋田にはほとんど残らないのが実情だ。

いくら若者が流入しても高齢化まっしぐらの東京

 藻谷浩介・日本総研主席研究員によると、東京圏の人口は2014年から19年までの5年間で78万人増えた。ところが年齢層別では、生産年齢人口の15-64歳が13万人(1%)減っている。

 若者が毎年大量に流入するのに、働き盛りの15-64歳人口がなぜ減るのか、と言えば、この年齢層の人々が高齢化し、急速に65歳以上に移行しているからである。その結果、65歳以上はこの5年間で99万人(12%)増え、中でも75歳以上が89万人(25%)も増えた。

 このように東京圏は高齢化に向けてまっしぐらだ。激増する高齢者に対して、医療・介護の施設や要員の整備は追い付いていない。孤独死も増えている。東京圏に暮らす高齢者やその予備軍は、これから深刻な覚悟を迫られる。

出生率最低の東京が人口のブラックホールと化す

 東京圏では0―14歳の子供も5年間で8万人(2%)減った。その原因は出生率の異常な低さにある。都道府県別の合計特殊出生率(1人の女性が生む子供の数)は、東京が1.20で全国最低(全国平均は1.42)である。

 東京では収入・住宅・保育環境の悪さなどの理由で、結婚・出産に踏み切れない若年層が多い。このため東京という巨大都市が回り続けるには、不足する若者をたえず地方から吸いこまなければならない。これゆえに東京は「人口のブラックホール」と呼ばれるのである。

 若者とりわけ女性が、出生率の高い地方から出生率の低い東京へ移住していく。その結果は明らかだ。東京でも地方でも人口減少が加速し、将来的にこの国を自滅に導くのである。

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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