小此木潔(おこのぎ・きよし) ジャーナリスト、元上智大学教授
群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。経済部員、ニューヨーク支局員などを経て、論説委員、編集委員を務めた。2014~22年3月、上智大学教授(政策ジャーナリズム論)。著書に『財政構造改革』『消費税をどうするか』(いずれも岩波新書)、『デフレ論争のABC』(岩波ブックレット)など。監訳書に『危機と決断―バーナンキ回顧録』(角川書店)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「全額を社会保障に」の約束を今こそ守れ
新型コロナウイルスによる感染症拡大の危機が、日常生活にパニックを起こしつつあるように見える。感染の世界的な広がりが、リーマン・ショックと呼ばれた2008年の金融恐慌(フィナンシャル・パニック)を上回る世界「コロナ恐慌」とでも呼ぶべき危機につながりかねない。
そんななかで、日本の緊急対策は後手に回り、本格的な対策への転換が求められている。その財源をきちんと考えることが不可欠である。
ここで考えたいのは、「消費税法」の規定をもとに政府が「消費税収の全額を社会保障にあてる」と説明してきたことだ。感染症のパンデミック(世界的な大流行)とグローバル恐慌のリスクが世界を襲う未曽有の危機にあたり、国民の命と暮らしを守るために、消費税の増税によって得られる税収を今こそ大胆に新型コロナウイルス対策に投入するべきではないだろうか。
東京都内のスーパーなどでは、入手困難なマスクや消毒液だけでなく、トイレットペーパーやティッシュペーパーなどを求める長い行列ができた。店員は「トイレットペーパーは国産だから、心配しないでください」と呼びかけるが、買い物客は「それでも心配だから」と行列に並ぶ。「みんながそうやって買うと、なくなっちゃうよ」と店員はこぼすが、どうにもならない。
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