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新型コロナ・パンデミック 長期休校がもたらす子ども危機

ESD実践校の住田昌治・横浜市立日枝小学校校長が考える懸念とチャンス

岩崎賢一 朝日新聞バーティカルメディア・エディター

 新型コロナウイルス感染症の爆発的感染拡大を防ぐため、政府が学校の長期休校を要請してから約2週間が過ぎました。学校では新学期が始まる4月6日からの再開を予定しているところが多いといわれていましたが、WHO(世界保健機関)が12日未明(日本時間)に記者会見して「パンデミック」(世界的な大流行)との認識を示したことを受け、国内での流行具合や政治判断によって休校がさらに長期化する可能性がでてきました。さらに東京都では3月25日夜、小池都知事が記者会見で「感染爆発の重大局面」と述べ、オーバーシュートの可能性が危惧されています。環境、貧困、人権、平和、開発といった社会的課題を教育にいかしてきた「ESD」(持続可能な開発のための教育)を実践してきた横浜市立日枝小学校の住田昌治校長にインタビューすると、突然の長期休校が及ぼす「子どもたちのもう一つのリスク」と「学校イノベーションのチャンス」が浮かび上がってきました。

住田昌治さんに聞く拡大自宅での留守番。不安になっていないだろうか?(本文の学校とは関係ありません) Daniel Jedzura/Shutterstock.com

パンデミックで休校が長期化する可能性

 WHOのテドロス・アダノム事務局長は記者会見で「COVID-19は今やパンデミックであると言える」との認識を示しました。これは感染拡大をコントロールできなくなり、国境を越えた大流行で世界中の誰もが感染の脅威にさらされていることを意味するとされています。記者会見でも示されたように、114カ国で報告された11万8000症例のうち、90%以上が中国、イタリア、イラン、韓国の4カ国に集中しており、そのうち中国と韓国では流行が減少しているとしています。

 ただ、報告をしていない国もあるうえ、感染対策が難しかったり、もともとの栄養状態が良好でなかったり、医療提供体制が脆弱だったりする国も多くあります。日本のような国でも、患者をコントロールできずに医療機関に殺到してしまうと医療崩壊が起きかねません。

 日本でもここ数日、経済の大きな減速が伝えられていましたが、WHOは健康の保護、経済的および社会的混乱の最小化、人権の尊重の間でどうバランスをとっていくかが重要だとしています。WHOのパンデミック表明を受け、日本の新型コロナウイルス対策がいますぐに大きく変わるわけではありませんが、学校の長期休校や大規模イベントの自粛要請がどこまで続くのか、緩和の判断が難しくなってきました。

 そんな中で子どもを巡る新たな危機が迫っている可能性があると警笛を鳴らす声があります。

子どもたちの姿が見えなくなることによるリスク

 ESD(Education for Sustainable Development)とは、持続可能な社会を担っていく人材育成のための教育を意味しています。文部科学省も力を入れており、住田さんはこれを横浜の公立小学校で主導してきました。日枝小学校の児童数664人のうち、2割ぐらいが外国籍と外国にゆかりのある子どもたちです(住田さんは「職員室のマネジメント改革」でも知られています)。

 政府の有識者会議で感染防御の施策が長期間にわたる可能性が示唆された3月9日、住田さんを日枝小学校に訪ね、に学校でいま起きていること、これから懸念されることなどについて話を聞きました。

――政府が2月末、3月2日から全国の学校に休校を求める方針を急に示しました。各教育委員会、各学校の判断に委ねる部分もありましたが、結局、予防原則から大半の学校が一斉休校に入りました。住田さんが校長を務める学校ではどのような対応をしていますか。

 公立学校なので横浜市教育委員会の方針に従っています。横浜の場合、まずは3月3日から13日まで休校とする通知が各学校に届きました。16日以降、どうするかは9日に改めて「一斉臨時休業の期間延長について、延長期間を令和2年3月14日(土)~令和2年3月24日(火)(ただし、卒業式の実施日を除きます)とする」という通知が届いたので、本校も3月24日まで休校とすることにしました。

――卒業式や修了式はどのように対応するのでしょうか。

 修了式は実施予定です。卒業式は3月19日に行います。卒業生と教職員だけによる簡素な式です。卒業式で従来行われていた内容の一部をカットして時間を短くし、参加者もしぼりました。卒業生の座席も間隔を空けて座ります。

――校庭で遊んでいる子どもたちがいますね。この子どもたちは、なぜ登校しているのでしょうか。

 横浜市は、1年生から3年生までの児童と特別支援学級の全児童を対象に、各学校での緊急受け入れを実施しています。4年生以上の児童はひとりでも自宅で留守番していることができるでしょうが、低学年や特別支援学級の児童はそれが難しいからです。両親が働いているなどして、家庭で1人で過ごすことが心配な子どもたちは、希望によって学校で受け入れています。

住田昌治さんに聞く拡大校庭で遊ぶ、緊急受け入れ事業で登校した子どもたち=岩崎撮影

――緊急受け入れ事業には何人ぐらいの児童が参加しているのですか。

 1日平均30人です。1~3年と特別支援学級を合わせると300人強の児童がいるので、1割ぐらいです。授業をやるのではなく、教職員は見守りです。持って来た課題やドリル、プリントをしたり、校庭で遊んだり、図書室で本を読んだり、おりがみをしたり、体育館で遊んだりといった具合に、学校の日課表のタイムスケジュールで1時間目から5時間目を学校で過ごします。学年ごとに場所を変えています。給食はないのでお弁当持参です。

――文科省からの通知に基づき、各地の学童では児童の座る感覚を1メートル以上離したり、なるべく接触させないようにしたりしています。緊急受け入れではどのように対応しているのですか。

 教室では机一つずつ空けて座って勉強しています。お弁当のときも同じです。遊ぶのもできるだけ個人遊びができるもので、できるだけ接触しないようにしています。緊急受け入れの数が30人であることと、学校はもともとスペースがあるのでこのようなことが可能ですが、保護者が中心になって行っている学童保育や横浜市が行っている同じような放課後の受け入れの場である「はまっ子ふれあいスクール」、「放課後キッズクラブ」では、多くの児童が利用しているので距離を取るのは簡単ではないと思います。

住田昌治さんに聞く拡大長期休校かつ外に出られない生活はストレスを与えていないだろうか?(本文の学校とは関係ありません) ANURAK PONGPATIMET/Shutterstock.com

――休校を巡り、メディアでは共働き家族やひとり親家族の保護者からの不安の声が取り上げられています。現場ではどのような保護者の声が届いているのでしょうか。

 2月のかなり早い段階で、「早く休校を」という声が少数ですがありました。「集団でいることは危ないのではないか」という意見でした。その時点では文科省も横浜市もそのような判断していないので学校独自で休校にはできないと職員が伝えています。

 政府の一斉休校方針後は、保護者からの声は学校に届いていません。急なことでしたが、家庭ごとに何とかやりくりされてくれたのだろうと思います。

 しかし、課題もあります。急な休校なので、夏休みのように準備期間があり、子どもたちにも保護者にも十分に情報を伝えることができなかった点です。現状では、学校からの情報をいま保護者に伝える方法は、メール送信と電話連絡です。メールアドレスの登録は強制ではないので、休校前にできるだけ登録して欲しいとお願いのプリントを出しました。ただ、すべての人が登録しているわけではありません。

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筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞バーティカルメディア・エディター

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当、オピニオン編集部「論座」編集を担当を経て、2020年4月からメディアデザインセンターのバーティカルメディア・エディター。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

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