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消費税とコロナのダブルパンチ 2020年日本は厳しい年に

IMFも成長率予測を引下げ。先進国でイタリアに次いで低い経済見通し

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は3月4日の記者会見で「2020年の世界経済の成長率は、現時点の見通しとして2019年の水準を大きく下回ると見ている」と指摘した。

 IMFは4月に世界経済見通し(WEO)を改定し、各国・地域の経済予測を修正する(IMFは毎4半期の初めの月にWEOを発表している)。

 2019年は2.9%だったが、IMFは当初、景気は回復し、2020年には成長率は3.3%に上昇するとしていたが、一転して2%台の低い伸び率にとどまるとしているのだ。2年連続で3%を下回れば、湾岸戦争があった1991~93年以来の低成長期となる。

 原因はいわずとしれた新型コロナウイルスの蔓延。日本銀行等各国の金融当局には、新型コロナウイルスによる世界経済のダメージはリーマン危機を上回るものだとの懸念が広がっているという。

新型コロナウイルス不況

 新型コロナウイルスは世界で感染が拡大しており、3月初旬の時点で、日本・韓国・イラン・イタリアの4ヶ国では既に感染者数が1000人にせまっている。

 発信源である中国では既に8万人以上が感染し、2800人以上が死亡している。中国では感染抑制のため、旅客機の一部が運休になり、学校の休校、企業の休業等が相次いでいる。また、中国の全国人民代表大会(全人代・日本の国会に相当)の常務委員会は2月24日、3月5日から北京で開催を予定している第13期全人代第3回会議の延期を決めている。

 感染者が中国以外で急増したことから、パンデミック(世界的流行)の懸念が浮上しており、世界保健機構(WHO)は、「すべての政府、すべての社会による取り組み」をもって感染を適切に抑え込むことが重要であると指摘している。各国もこれに対応して、特にイタリアでは休業や休校が相次ぎ、プロサッカー・セリエAを含むスポーツ・イベントが中止されている。

 イギリス政府はロンバルディア州とヴェネト州への渡航を控えるように国民に勧告している。フランス政府は2月29日の緊急会議を開き5000人以上が集まる屋内集会をすべて禁止するなどの防疫措置を発表した。

 東アジアでは、韓国で感染者が急拡大し、3月上旬で感染者は5766人に死者は35人に達している。日本では、3月4日現在、257例の患者、27例の無症状病原体保持者が確認されている。うち6名が死亡している。日本では、新型コロナウイルス感染者対策本部を立ち上げ、既に10数回の会合を開催している。安倍晋三総理は2月27日の第15回会合のあと次のように述べている。

 「一昨日、決定対策の基本方針でお示ししたとおり、感染の流行を早期に終息されるために、患者クラスターが次のクラスターを生み出すことが極めて重要であり、徹底した対策を論じるべきと考えております」

 基本方針では新型コロナウイルス感染の拡大を備え、政府は患者数が大幅に増えた地域では、重病者向けの医療体制を確保するため、症状が軽い人は自宅療養を求めるなどの対策を決定している。全国の小中学校については一斉休校を要請、各地では混乱が続いている。

 スポーツジムでも休業が広がり(筆者が通っているジムも3月5日~16日まで休業になってしまった)、相撲や野球も無観客で開催することを決定している(3月8日から開催される春場所を無観客で開催することを決定、力士などに感染者が出た場合には場所の途中でも中止するとしている。プロ野球もオープン戦全試合を無観客で開催することを決定。3月20日開催するレギュラーシーズンは予定通り開催できるよう準備を進めていきたいとしている)。

spyarm/Shutterstock.com

 日本を含めて各国で新型コロナウイル対策が進められているのは、当然でありかつ適切なことなのだが、その結果、経済活動が萎縮することも避けられない。いわば、新型コロナウイルス不況とでも呼べる状況になる可能性が高いのだ。

先進国でイタリアに次いで低い成長率

 IMFが2020年の成長率予測を引き下げるとしていることは既に述べたが、OECDも3月2日「経済見通し中間報告」を発表し、世界経済の成長率(実質GDPの伸び率)を2020年には2.4%、2021年は3.3%を予測した。新型コロナウイルス感染拡大を織り込み、2020年の見通しを、2019年11月の見通しから0.5%下方修正した。

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