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コロナ経済対策は消費税減税より現金給付~マイナンバーの活用を

所得制限を付け真に必要な世帯に現金給付し、国税・社会保障に必要なインフラ整備を

森信茂樹 東京財団政策研究所研究主幹

 新型コロナウイルスの緊急経済対策として安倍総理は、「機動的に、必要かつ十分な経済財政政策を間髪入れず講じる。日本経済を再び確かな成長軌道へと戻すため、一気呵成にこれまでにない発想で思い切った措置を講じる」と述べた。

 対策は緊急支援対策と本格的な経済対策との2つに分かれる。

 緊急対策としては、インバウンドの落ち込みやイベント自粛により被害を被っている小売店をはじめとする中小企業への緊急支援や、臨時休校で休まざるを得ない子育て世帯や休業補償のない零細個人事業者(フリーランスなど)への支援などで、すでに実施されているものもあるが、早急に対応する必要がある。

 問題は、そのあとの経済落ち込みを防ぐ本格的な経済対策である。

 すでに俎上に上っていると思われるのは、リーマンショック時のような国民全員への給付金、消費税減税(凍結)、キャッシュレス還元の大幅拡充などである。

 筆者は、以下の2つの原則に沿った対策が必要と考える。

所得税減税の効果は薄い

 第1に、現在生じているのは、一過性の現象で、時間はかかるかもしれないが混乱は必ず収束するということである。したがって対策は、わが国の中長期的な経済政策と整合性の取れたものにしていく必要がある。

 第2に、対策は、われわれ国民の税金を使うことになる(国債で賄うにしても国民負担)が、そうである以上、真に必要な者にきちんと届く無駄のない効率的で効果的な方法を考えていく必要がある。

 財政上の対策として考えられるのは、減税と給付金である。また減税は、消費税減税と所得税減税に分かれる。

 そこでまず所得税減税を考えてみたい。参考になるのは、1998年暮れに橋本総理が決断したアジア金融危機対応の2兆円特別減税である。

 ASEAN非公式首脳会議から帰国した橋本総理は、「アジアの経済状況が極めて深刻であること」「我が国の金融システムにも国民の不安感が払拭出来ない状況にあること」「日本発の世界恐慌の引き金は絶対に引かないこと」を理由に、2兆円規模の所得税特別減税を行った。単年度の減税で、緊急性にかんがみて、源泉徴収から減税するという方式を採用した。

 しかし今回は、税金を払っていない課税最低限以下の人にも配慮する必要がある。逆に高所得者への配慮は不要だ。所得税減税は効果が薄いと考えるべきだろう。

参院予算委で、公明党の杉久武氏の質問に答弁する麻生太郎財務相=2020年3月16日

消費税を減税するリスク

 では消費税減税・凍結はどうか。

 背景にあるのは、消費税に対する根強い反発である。確かに2019年10月からの消費増税が消費の腰をおったことは事実だ。

 しかし中長期的に見ると、個人消費は、幾たびの消費増税にもかかわらず趨勢的に見れば増加してきた。

 例えば3%から5%への引上げ時の実質家計消費支出を見ると、1996年度の254兆円から1997年度の251兆円へとわずかに減少したが、その後は回復。8%引上げ時も、2013年度の294兆円から2014年度287兆円と減少したが、その後回復している。

 欧州諸国の経験でも、経済変動にもかかわらず、長年かけて20%前後の消費税を達成し維持している。

 一方で消費税は、全世代型社会保障の財源の切り札として引き上げられたものである。とりわけ10%への引上げは、幼児教育・保育の無償化の財源となっており、子ども世帯の負担軽減を通じて、わが国で最も重要な施策である少子化対策につながっていく。

 また消費税率を動かすことは、新たな「駆け込み・反動減」を生じさせ、経理システムの改修など事業者の事務負担増は計り知れないものがある。タクシーなどの認可制料金や公共料金、診療報酬なども再設定が必要になり、余分なコストがますます収益を圧迫する。

 最大の問題は、

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