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「感染爆発の重大局面」は長期戦 集団免疫の獲得による終息への道のり始まる

元東京都福祉保健局技監が小池都知事会見の新型コロナ自粛要請を読み解く

岩崎賢一 朝日新聞社 メディアデザインセンター エディター兼プランナー

少数での飲食での自粛まで求めた背景

――マスクは東京のドラッグストアやスーパーになかなか入荷せず、使い回しをしている人も多くいるのが実情です。

 マスクはリスクの違いによって使い分けが必要です。医療従事者が標準予防でするマスクと、感染症病棟の医療従事者が感染予防に付けるマスクの性能が異なるのは、リスクの違いによるものです。一般の人が医療従事者と同じマスクを付ける必要はありません。リスクの程度に応じた感染対策が重要です。医療現場にマスクが行き渡らないという状況は改善しなくてはいけません。

 一般の人たちは、新型コロナウイルスに感染して重症化する心配をしますが、医療崩壊さえ起きなければ、たとえ重症化したとしても適切な治療を受けられます。一般の人たちはそう考えて行動することが大切だと思います。

――医療の進歩や医療政策の変更で、在宅医療や在宅介護のほか、通院で化学療法をするがん患者、日常的に免疫抑制剤を服用している人が増えるなど、SARSや新型インフルエンザが起きたときと、社会の構造が変化しています。

 そういう意味では、SARSのときよりリスクは高まっているとも言えるでしょう。免疫力が落ちている人を守るため、健康な人は自分が感染しないため、そして無症状で他人にうつさないためにも、国民一人一人の予防行動が必要です。日本でも市中感染が起こっていると思いますが、現段階ではイタリアほど市中感染のリスクが高い状況ではないと考えます。

 職場に通勤しても、オフィスワークで人の出入りが少なければ、感染リスクはさほど高くありません。しかし、仕事帰りに人が密集している飲食店に寄ってお酒を飲み、翌日、出社すれば、オフィスの感染リスクは高まります。小池知事が、少数での飲食の自粛を求めたのは、一人一人がそこまで考えて行動しなくてはいけませんという意味合いだと思います。ランチでも同じことです。

感染爆発の重大局面いつまで拡大イタリアのローマでホームレスの男性の検温をする赤十字のボランティア=AP

これからは持続可能な予防行動にシフトを

――新型コロナウイルスの対策もフェーズによって変わってきます。いま、そしてこれから必要なことは何でしょうか。

 対策のフェーズをシフトしていく時期だと思います。たとえば、感染爆発が起きれば、一斉休校が続くと思います。一方で、いつまで休校し続けるのかという問題もあります。SARSは終息まで1年近くかかりました。しかし、世界中の専門家が研究しても、どうして終息したか、明確な答えは出ていません。

 いま出ている悲観論には、感染爆発への悲観論と、みんなが予防行動を取ることで長い付き合いになるという悲観論があります。私は後者です。

 イタリアは医療崩壊を起こすほどの感染拡大をしていますが、それによって集団免疫を獲得すれば、散発的な感染者は続きますが、急速に収まっていく可能性があります。もちろん、感染爆発による医療崩壊で多くの人を救えなかったということはありますが。

 日本はいまこそ持続可能な予防行動にシフトしていくべきです。学校を再開すれば、感染者が広がるリスクは休校時より高くなります。しかし、すべての社会機能をいつまで止めておけばいいのでしょうか。重大局面は続きますが、予防行動を続けることで感染爆発へのリスクを下げれば、その間に有効な治療薬が見つかったり、2年ほど経てば有効なワクチンが開発されたりする可能性があります。

――新型インフルエンザ対策でも、社会機能の維持が綿密に検討されていました。これから「感染爆発の重大局面」が長く続く中で社会機能をどう維持していくのか。そのために、どのような対策が必要かを一人一人考えて行くことが大切だということですね。

 新型コロナウイルス対策は、新型インフルエンザ対策と共通点が多いですが、2009年の流行の経験は今回、あまりいかされていない気がします。違いは治療薬がないことで恐怖心が高まっている点です。インフルエンザに対しては当時、タミフルやリレンザといった治療薬が新型インフルエンザでも有効とみられ、対策の検討段階から議論され、備蓄もありました。ただ、新型コロナウイルスについては、このような決定的な治療薬がなくても、医療崩壊をしなければ救命率は上がってくると思います。

感染爆発の重大局面いつまで拡大アメリカ・テキサス州の医師は、クリニック前の駐車場に予約者専用の新型コロナウイルス検査センターを設けた=AP

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筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞社 メディアデザインセンター エディター兼プランナー

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当、オピニオン編集部「論座」編集を担当を経て、2020年4月からメディアデザインセンターのバーティカルメディア・エディター、2022年4月からweb「なかまぁる」編集部。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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