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「世界コロナ恐慌」下で首都封鎖は最悪だ

回避へ、迅速・有効な政策を

小此木潔 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックによるグローバル経済への打撃は、2008年のリーマン・ショックをはるかに上回る深刻な世界不況を引き起こしている。1929年に始まった世界大恐慌以来の深刻な恐慌となることは確実だろう。私たちはすでに「世界コロナ恐慌」の真っただ中にいるのだ。

 大恐慌当時とは違って、リーマン・ショック対策で発足した20カ国・地域(G20)による財政出動などの対策が一定の歯止めになることが期待されるが、パンデミックも恐慌もいつ終わるかの見通しすら立たない。このまま首都・東京が封鎖に追い込まれ、日本の社会と経済が壊滅的な打撃をこうむる危険すらある。

 だからこそ、そんな最悪の事態をなんとしても回避するための政策努力が問われている。ところが安倍首相や小池知事の緊急記者会見では、取り組みのスピードの遅さと具体策の検討不足が目立つ。危機管理の原則は最悪の事態を想定して迅速に有効な対策を打つことであるが、それができていないことが見過ごせない不安材料である。

これはすでに世界恐慌である

拡大トランプ米大統領とムニューシン財務長官(左)

 米セントルイス連邦準備銀行のブラード総裁は3月22日、新型コロナウイルスによる感染爆発の影響で、2020年4~6月の米経済成長率がマイナス50%に達し、失業率は30%まで悪化する可能性があると語った(3月23日付ロイター日本版)。

 1929年のニューヨーク市場の株価大暴落に始まった大恐慌は、米国が第二次大戦前の戦争準備を本格化するまで30年代を通して世界経済に大不況をもたらした。その間における米国での最悪の失業率は約25%で、米国の総生産は一時、ほぼ半減したのだった。そんな歴史的破局と同様の生産・消費の激減に見舞われるだろう、という警告をブラード総裁は発し、国内総生産(GDP)の落ち込みを埋め合わせるために2.5兆ドルという大規模の財政出動を提案したのだった。

 実際、米労働省が3月26日に発表した21日までの1週間における失業保険申請件数は前週比約300万円件も増えて328万3000件を数え、リーマン・ショック時の約65万件の5倍にも達した。これまで1週間当たりの最大申請件数は1982年10月の70万件弱だったから、リーマン・ショックをはるかに上回る経済収縮と失業の大津波が米国を襲っていることはだれの目にも明らかである。

 ムニューシン財務長官もさきに経済対策を米議会に説明する際、このままでは失業率が20%に上昇してしまう、と大恐慌並みの大量失業をほのめかして協力を要請したいきさつがある。⽶経済が4〜6⽉期に2けたのマイナス成⻑に転落するという観測が強まるなか、米国がリーマン・ショック時の7千億ドルを上回る総額2兆ドル余りの経済対策決めたのも、大恐慌以来の危機という認識が議会にも共有されたからだった。

 ニューヨークの株式市場のダウ工業株30種平均の下落ぶりや、世界同時株安の進展ぶりにも、今回のコロナ恐慌の激しさが表れている。また、G20が総額5兆ドル(約550兆円)もの経済対策を決めたのも、コロナ恐慌がリーマン・ショックよりも大きな打撃を世界経済に及ぼすという予想に基づくものである。

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筆者

小此木潔

小此木潔(おこのぎ・きよし) 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

上智大学教授。群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。富山、奈良、大阪、ニューヨーク、静岡、東京で記者をしてきた。近年は日本の経済政策や世界金融危機など取材。2009年5月から東京本社論説委員室勤務、11年4月からは編集委員も務め、14年4月から現職。著書に「財政構造改革」「消費税をどうするか」(いずれも岩波新書)、「デフレ論争のABC」(岩波ブックレット)。

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