新型コロナ対策で重要性増すパーソナルサポートと「隠れクラスター」発見
LINE活用のプロジェクト率いる慶応義塾大学医学部の宮田裕章教授に聞く
岩崎賢一 朝日新聞社 メディアデザインセンター エディター兼プランナー
科学的根拠に基づいたアルゴリズムで情報提供
――「パーソナルサポート」は、登録した人のパーソナリティーに合った情報が届くわけですね。情報はすべてAIで判断していくのですか。
現時点ではAIというより、世界中で積み上がった科学的根拠に基づいたアルゴリズムで判断しています。中国の症例報告や研究論文などが世界に報告されていることもあり、日本ではこのウイルスにはどのようなことに気をつけた方がいいか、最初の時点でも情報がありました。もちろん、エビデンスは欧米を含めてどんどん新しいものが出てきます。感染症学会の臨床医のみなさんとディスカッションをしながら適切な情報を提供し、必要な質問やお返事を随時更新しています。
「3密」を避けるとか、手をどう洗うかといった多くの人に共通する事項はいいのですが、なにかしらの症状がでてきたときにどう対処をしたらいいのか、どこに相談したらいいのか、何が正しい情報なのか、状況に合わせて一つ一つアクティブに情報を取得していくことはなかなかできません。
「パーソナルサポート」は、健康な人でも1週間に1回質問がくる仕組みで、長期的にフォローしていくようになっています。エビデンスが刻々と変わっていくなか、いま最も重要なことは、一番必要な情報を組み合わせ、必要な人に届けることです。

LINEの入力画面
規制を解除するときにもデータが必要
――いま、啓発、オーバーシュートを防ぐためのツールの一つであるという説明がありましたが、もう一つはそこから得られるデータを分析したうえで施策の判断材料にしていきたいということですね。
東京では感染経路が追えない感染者が増えてきています。エリア単位で発熱者が多いとなると、「エリアクラスター」みたいなことを想定して対処していくことの参考になり、ロックダウンをするにしても、最小限で最大の効果が得られるように検討するための材料とすることが可能になります。
そういったデータがない場合は、どうしても広域でロックダウンやそれに相当する対応を取るしかありません。広域のロックダウンは経済へのダメージが大きいし、長期にわたると人々が疲れてしまいます。また、措置を解除するときも根拠が必要で、そのためのデータも必要になってきます。
ライフログを事業者が取得して対策を行う方法は、すでにフランスでも提案されていますが、大きな議論が起こっています。もちろんこうしたアプローチが重要な局面もありますが、民主的なアプローチの中で解決の糸口を見いだしていく方法も探りたいと考えました。
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