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緊急事態宣言の前に「コロナ難民」? 医療体制の転換が不可欠。忍び寄る「医療崩壊」のプロセス

国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長に聞く

岩崎賢一 朝日新聞バーティカルメディア・エディター

 新型コロナウイルスの感染者増加に伴い、地域ごとの医療現場の体制整備が急務――。東京都の治療の最前線に立つ国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長が警鐘を鳴らしています。一見感染者でない傷病で医療機関に救急搬送されてきたり、各地に散らばる在宅医療・介護の現場で緊張感が走っていたり、各論をみると、多くの課題に対する準備が進まない地域もあると言います。
 緊急事態宣言を出すか出さないかという一点に注目が集まるなか、その前に私たちが考えておかなくてはいけない「感染爆発時の世界」、医療提供体制の準備について聞いてみました。

別な病気やけがで運ばれてくる救急患者の中に感染者がいるかもしれない

――大曲さんは最近、見た目が他の病気やけがである患者が救急車で運ばれてきて入院してからコロナ感染者と気付くまで時間がかかるというケースを例示し、警鐘を鳴らしていました。各地で院内感染が起きかねないという状況になりつつあるということですね。治療現場からみると、医療従事者や救急隊、患者や家族はもっと想像力を働かせて情報収集し、判断、行動しなくてはいけないということですか。

 これは、季節性のインフルエンザでも同じことです。人間は体調を崩したときに転ぶことはよくあるし、頭を打つこともあります。そういうとき、「骨折」という情報で運ばれてくる人もいます。救急で調べてみると発熱していて、さらに調べるとインフルエンザだったということがあります。同じようなことが新型コロナウイルスでも起こります。

緊急事態宣言の前に備えるべきこと拡大2020年3月30日、フランス東部の状況を緩和するため、ストラスブールからスイスに感染者を運ぼうとするフランスのヘリコプター=AP

医療従事者の方から想像力を巡らせて対応を

――国立国際医療研究センターはERも併設され、日々様々な患者が搬送されてきています。感染拡大が懸念されている状況の中で、一般の患者や家族が医療機関にアクセスするとき、どのような点に注意したらいいのでしょうか。

 人が転んだときは「転んで頭打った」という情報で運び込まれてきます。患者や家族が注意すると言っても気が動転している本人たちには、「熱がある」などの情報を積極的に伝えるのは難しい気がします。「かぜの症状があるからコロナかも」というように考える余裕はないと思います。むしろ医療従事者の方からどうして転んだのか、なんで動けないのか、想像力を巡らせ、新型コロナウイルス感染症の可能性があるかもしれないと考えて対処していく方が安全だと思います。
 先日、突然死の患者、行き倒れの患者が運ばれてきたとき、警察関係者が新型コロナかもしれないと考えて騒ぎになり、診療が止まったことがありました。海外のニュースでそのような事例が流れていたので、その影響かもしれません。感染症指定医療機関以外の医療機関も、そのようなことも含めて対応を考えて行かないといけないと思います。

蔓延期に近づけば近づくほど院内感染のリスク

――今後、別の疾病で入院している入院患者から感染者が見つかることがでてくると予想されます。

 感染しても症状が出ない潜伏期間があります。そのような状況は、蔓延期に近づけば近づくほどあり得ます。院内感染のリスクの高まりが懸念されます。
 インフルエンザのときも、各地の医療機関で院内感染が散発的に起きています。熱があったり、せきをしていたり、鼻水が出たり、のどが痛かったりする入院患者がいたら、どのような病気でもアンテナを張って慎重に診ていくことが重要になります。患者側は「痛い」「苦しい」でいっぱいいっぱいだからです。

緊急事態宣言の前に備えるべきこと拡大院内感染はどこの病院でも起こるリスクを抱えている=岩崎撮影

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筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞バーティカルメディア・エディター

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当、オピニオン編集部「論座」編集を担当を経て、2020年4月からメディアデザインセンターのバーティカルメディア・エディター。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

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