元検事総長も弁護士も会長・社長の言いなりだった~関西電力の監査制度の実態
倫理観を失ったエリートたち。コーポレート・ガバナンスの最大の危機
加藤裕則 朝日新聞記者
元検事総長も弁護士も言いなり
月山執行役員らは動いた。さっそく関電のコンプライアンス委員会の社外委員を務める千森秀郎弁護士に相談に行った。2018年の調査報告書をとりまとめた人物でもある。千森弁護士は取締役会に報告することが望ましいが、個別にすべての取締役に話すことでも足りる、との見解も示したという。
ただ、千森弁護士は調査委員会に対して、こう反論している。
「各取締役に個別に報告することでも足りるとの積極的な法的意見を述べたととらえられたのであれば、真意とは異なる。正面から問われれば、問題はあると回答しているはずだ」
あいまいな会合だったのだろうか。両者の言い分は根幹ですれちがった。
監査役たちは2018年11月7日にも月山氏との会合を持った。調査報告書によると、このとき、月山氏側は、監査役会が取締役会に報告する必要はないとの考えを持っているという印象を受けたという。これに対して監査役会は「法的な義務がないということを述べた事実はないし、本来の意図と異なる」と反論している。ここでもあいまいなやりとりに終始したのだろうか。

関西電力本店=大阪市北区
月山氏は、岩根社長と八木会長に報告。両氏は当初から打ち合わせしていたように、取締役会には報告せず、また、個別に取締役にも対応しないことを告げた。これについて総務室法務部門の中には異論も出たというが、最終的には社長・会長の判断に従ったという。
監査役に絡んでマスコミが注目したのは、当時、社外監査役に土肥孝治・元検事総長がいたことだ。
・・・
ログインして読む
(残り:約2444文字/本文:約5032文字)