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新型コロナ 子供食堂から見た「緊急事態宣言」の重みと苦しみ

「せたがや子ども食堂・みっと」の井上文事務局長に聞く

岩崎賢一 朝日新聞社 メディアデザインセンター エディター兼プランナー

「他人の気持ちがわかるようになって」

――学習指導や遊びなど食事以外のことを組み合わせる子供食堂もあります。みっとではどうしているのですか。

 いまの活動は食事の提供を中心にしています。食後は会話を増やすため、献立にまつわるクイズをしたり、カードゲームをしたりして楽しい時間を過ごしています。以前は、近くの集会所を借りて学習支援や工作、遊びのプログラムを行っていましたが、いまは「みんなで一緒に楽しく食べよう」という原点に戻っています。

 当初は大学生のボランティアも多く来ていました。しかし、子どもの数に比べて大人の数が多すぎてしまったため、いまは大学院生1人の有償ボランティアにしぼっています。食事に来る子どもたちが、社会のルールを知って、子ども同士で会話できるようにならないといけないと思ったからです。

――子ども食堂に来るようになって子どもたちに変化はありましたか。

 他人の気持ちがわかるようになってきました。人と人との間合いがわかってくるようになってきます。

「長期休校のときこそ何とかしないといけない」

――今年に入ってから新型コロナウイルスの感染防止が叫ばれ、2月末には安倍首相が一斉休校を要請したため、子どもたちは3月から家庭で過ごす日々が続いています。みっとではどのような対応をしてきたのでしょうか。

 スタッフの間では当初、「学校に通えるうちは続けましょう」と話していました。ところが、よく考えると長期の休校が始まると給食を食べることができなくなるということになります。私たちがなぜ、子どもたちに食事を無料提供することを始めたのか原点に立ち返ると、長期休校のときこそ何とかしないといけないのではないかという気持ちに変わってきました。

 子どもたちが集まって夕食をとることは厳しいと考え、月2回の食堂は休止し、逆に週2回ペースでお弁当を配布することにしました。課題もありました。お弁当を配る日時の周知です。突然別の曜日に始めても子どもたちはわかりません。保護者に電話連絡しても子どもに伝わるだろうかという不安もありました。結局、3月16日から毎週月曜日と木曜日に限定15食(アレルギー食含む)のお弁当を配ってきました。

子供食堂から見た「緊急事態宣言」拡大食堂の代わりに始まったお弁当配布=みっと提供

――緊急事態宣言を受け、大人も子どももストレスがかかった生活が続くことになります。みっとのお弁当配布は4月も継続するのでしょうか。

 当初は4月6日から小学校が再開すると思っていましたが、3月19日、小池百合子・東京都知事が、「ロックダウン」(都市封鎖)という言葉まで使い、不要不急の外出を自粛するように強く要請しました。そして、緊急事態宣言です。スタッフで検討した末、当面、お弁当配布も中止することにしました。ただ、何か手立てはないかスタッフで近くミーティングをする予定です。

――お弁当の配布をなぜ中止したのか、理由をもう少し詳しく教えてください。

 1人でも必要な子どもがいたら、お弁当を作って渡したいという気持ちはあります。しかし、二つのリスクが伴います。一つは子どもがお弁当を受け取りにくるときの感染リスク。もう一つはスタッフが集まった調理するときの感染リスク。

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筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞社 メディアデザインセンター エディター兼プランナー

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当、オピニオン編集部「論座」編集を担当を経て、2020年4月からメディアデザインセンターのバーティカルメディア・エディター、2022年4月からweb「なかまぁる」編集部。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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