メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

コロナ対策で突出する「和牛」への大盤振る舞い

多くの国民が困っているのに、なぜ和牛農家だけ破格の支援がなされるのか?

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 多くの国民が困っているのに、なぜ和牛農家だけ支援されるのか。

 4月11日NHKは、新型コロナウイルスの感染拡大で和牛の需要が減少し、国産牛肉の在庫が6割増加しているため、農林水産省は和牛の販売促進に500億円を投じるとともに、学校給食で和牛を使う際の補助金交付、農家が出荷する牛1頭当たり2万円の支給を行うと報じた。

 和牛の販売促進策としては、具体的には、和牛を卸売業者が小売業者などに販売した場合に1キロ当たり1000円の奨励金を交付するほか、在庫を保管するための追加的な経費についても補助することにしていて、スーパーでのセールなどを通じて消費の回復につなげたい考えだという。

 私は、これまで『「和牛商品券」という愚策が提案されてしまった理由』および『学校給食で余剰農産物を処理するな!~「高級和牛を給食に」が映し出すもの』の二回にわたり、自民党や国会で検討されている和牛対策の問題点を指摘するとともに、『あなたの知らない農村~養豚農家は所得2千万円!』や『農家はもはや弱者ではない』などで、畜産農家の所得水準が極めて高いことや、畜産農家を保護・支援する理由は、食料安全保障、環境保護、国民の健康維持のいずれの観点からも、存在しないことを指摘してきた。

拡大Kelly Marken/Shutterstock.com


筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

山下一仁の記事

もっと見る