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コロナ休業補償は西伊豆・御殿場や東京を見習え

「人命」なくして「経済」なし

小此木潔 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

 新型コロナウイルス感染症対策で後手に回り続ける安倍政権の対策は、もはや「コロナ失政」とでも呼ぶべき段階に達した。自粛は求めるが補償はしないという非現実的な論法に固執し、補償が不公平になってはいけないなどと繰り返している。

 どうやら経済や財政を傷めたくないということらしいが、そんな言い訳が通用するものではない。人命をとことん尊重しながらウイルスとのたたかいに打ち勝つことなしには、経済社会も国や地方の財政も立ち直れるはずがない。人命尊重を優先して新たな補償に踏み切った静岡県西伊豆町や御殿場市、東京都の決断を政府はただちに見習うべきだ。

補償なしに感染は止まらない

拡大新型コロナウイルス感染症対策本部に出席する安倍首相=2020年4月11日、首相官邸

 4月11日に開かれた政府の新型コロナウイルス感染対策本部会合で、安倍首相は緊急事態宣言の対象地域となっている7都府県の企業に対してオフィス出勤者を最低7割減らすよう求めるとともに、「密閉、密集、密接、三つの密がより濃厚な形で重なる、バー、ナイトクラブ、カラオケ、ライブハウスはもとより、繁華街の接客を伴う飲食店等については、緊急事態宣言が出ている地域か否かを問わず、全国全ての道府県において、その出入りを控えていただくよう」にと要請した(首相官邸ホームページ)。

 店舗などに営業の自粛要請をすると補償を出さなければならなくなるから、国民に店舗などへの出入りを自粛するよう求めることにしたのだろう。しかし、営業を自粛する企業や自営業者などに対する補償については一言も触れず、相変わらず出そうとしない姿勢を示した。

 飲食店などへの出入り自粛要請も企業の出勤者削減要請も、本来は宣言とともに行うべきものだが、景気への影響や補償を心配するあまり、小出しの対策となってしまった。しかも飲食店などについては、東京都が自粛要請しようとしたのを止めることまでしたあげく、客として出入りする人々に自粛を求めるという回りくどい呼びかけとなったのである。

 これは、東京都に比べて安倍政権の政策が後手に回っただけでなく、場当たり的に決められていることを露呈してしまった。そればかりでなく、政府の真剣さが疑われ、肝心の宣言も効果が薄れる原因をみずから作り出すという情けない事態に陥ってしまったのである。本気で外出自粛を求め、8割もの接触削減をというのなら、補償は不可欠であり、それなしに感染拡大は止められない。

 首相は「損失補償は現実的ではない」と繰り返してきたが、補償を出さずに自粛だけ呼びかける政府の姿勢こそ現実的ではない。

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筆者

小此木潔

小此木潔(おこのぎ・きよし) 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

上智大学教授。群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。富山、奈良、大阪、ニューヨーク、静岡、東京で記者をしてきた。近年は日本の経済政策や世界金融危機など取材。2009年5月から東京本社論説委員室勤務、11年4月からは編集委員も務め、14年4月から現職。著書に「財政構造改革」「消費税をどうするか」(いずれも岩波新書)、「デフレ論争のABC」(岩波ブックレット)。

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