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ポスト・コロナ経済は「脱アベノミクス」で!

日本はコロナ後も再び「円安志向」「観光立国」でやっていくのか

原真人 朝日新聞 編集委員

無駄に遣った1本目・2本目の矢

 コロナショックを受けて、米国も欧州各国も、日本をはるかに上回る財政出動と中央銀行による資金供給に乗り出している。

 日本は感染者数がまだ少ないから時間差で出てくるのかといえば、そうでもない。安倍政権による所得を失った人への給付金や休業補償をめぐる政策決定の迷走ぶり、及び腰をみれば、よくわかる。米欧諸国のように確信をもってスピーディーに補償政策を打ち出しているように見えない。

 これは不思議な光景である。財政出動や超金融緩和にあれだけ熱心だった安倍政権が、まさにそれが切実に必要なこの局面で政策発動を渋っているように見えるのだ。

 なぜか――。おそらく、やりたくても、思い切ってはやれないことがわかったからだろう。

 日本政府や日本銀行はアベノミクスの名のもと、マクロ経済政策カードをこれでもかというほど打ち続けてきた。たとえ不要不急であっても景気良くバラマキ続けた。そのとがめをこの局面で受けている。

 2012年12月に発足した安倍政権は本当にツイていた。同じタイミングで米欧景気の追い風を受け、日本の戦後最長景気が始まったからだ。アベノミクスが戦後最長景気を作ったのではない。戦後最長景気という「ツイている時期」に第2次安倍政権がたまたま存在しただけなのである。

拡大2020年五輪の開催都市が東京に決まり、喜ぶ安倍晋三首相ら=2013年9月7日、ブエノスアイレス

 だが、安倍晋三首相はその基本認識を欠いていた。誤った経済政策が奏功したのだと勘違いし、アベノミクスのエンジンを何度も吹かしてきた。そして政権は毎年100兆円超のメタボ予算を組み続け、理由を見つけては経済対策を打ってきた。

 首相の意を受け発足した黒田東彦総裁が率いる日銀はアベノミクスの主翼を担い、異次元緩和に乗り出した。物価上昇目標2%が達成されていないという理由で(いまもまったく2%に届く気配はない)、金融緩和カードをぜいたくに切り続けた。国債や上場投資信託(ETF)を買い支え、国債市場と株式市場の相場は歴史的な高みにまで上昇した。

 揚げ句の果てに、日銀はマイナス金利政策にまで手を染めた。おかげでローンビジネスの存立を危うくし、金融機関の経営基盤は揺らいだ。いまコロナショックで疲弊する地方企業を支えなければいけない地方金融機関の足腰はきわめて脆弱になっている。

 安倍政権は、このアベノミクス1本目の矢(大胆な金融緩和)と、2本目の矢(機動的な財政出動)が日本経済の安定を築いていると吹聴してきた。それはまったくの誤りだ。

 コロナショックで露呈したのは、大胆な金融緩和と機動的な財政出動は常時おこなわれる類いのものではなかった。本来なら平時にはその力を蓄え、危機時にこそ発揮すべきだった。

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筆者

原真人

原真人(はら・まこと) 朝日新聞 編集委員

1988年に朝日新聞社に入社。経済部デスク、論説委員、書評委員、朝刊の当番編集長などを経て、現在は経済分野を担当する編集委員。コラム「多事奏論」を執筆中。著書に『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)、『日本「一発屋」論 バブル・成長信仰・アベノミクス』(朝日新書)、『経済ニュースの裏読み深読み』(朝日新聞出版)。共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)、「不安大国ニッポン」(朝日新聞出版)など。

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