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積極的疫学調査は名ばかり。新型コロナ検査を制限するとても消極的な基準

高熱・肺炎でも受けられないと切実な声。一方で不気味な死者数が増加

松浦新 朝日新聞さいたま総局記者

拡大さいたま市保健所=2020年4月21日(筆者撮影)

 新型コロナウイルスの感染を心配して保健所に相談しても検査が受けられない――。PCR検査のハードルが高いという不満の声が、朝日新聞にも多く寄せられている。中には肺炎でも受けられないなど、切実な声もある。

 保健所はクラスターを潰(つぶ)すと言うが、その基準はとても消極的だ。一方で、不気味な「死者数」が増えていることを見逃してはならない。

38度の熱、肺炎でも保健所は「ノー」

 さいたま市の男性(63)は3月23日、38度近い熱が出て、近くの診療所にかかった。翌日も38度を超す熱がでたため新型肺炎を疑い、埼玉県の「県民サポートセンター」に電話をかけた。しかし「検査は37度5分以上の熱が4日続いた場合」と言われ、27日になっても38度台の熱があったため、再度かけると、今度は「肺炎の症状がないと検査対象ではない」と告げられたという。

 その翌日、定年後に参加している東京都23区内のグループの仲間3人が新型肺炎と診断され、自分も検査が受けられると期待した。ところが、区の保健所に3人との「濃厚接触者」ではないと判断され、受けられない。

 PCR検査は、未知の感染症を封じ込めるために行う「積極的疫学調査」の一環として、国立感染症研究所(感染研)が示す「積極的疫学調査実施要領」などにもとづいて保健所が判断する。

 その要領によると、濃厚接触者であるかどうかは、①患者であることが確定した人と同居する家族らや、車に同乗するなど長時間接触した人②適切な感染防護をせずに患者を診察や介護するなど医療や介護の従事者③感染予防策なく、目安として1メートル以内で患者と接した人――などが対象とされている。

 男性は活動の中で3人と近くにはいなかった、と見られたようだ。実施要領には「丁寧に積極的症例探索」を行う場所として、医療機関、福祉施設、職場、学校に加えて、ダイヤモンドプリンセス号のような船内、スポーツジムなどがあがっている。保健所にほかの場所の例はないかを聞くと、これまでにクラスターが確認された「ライブハウス」、「接待を伴う飲食店」があがったが、男性の所属団体のような場所は対象にならないという。

 しかし、その後も38度台の熱が続き、4月4日に病院でレントゲンを撮ると、肺炎が確認された。医師が保健所に検査を依頼したが、「熱が高くなく、安定しているので検査は受けられない」と告げられたという。

 この間に、同居の息子(23)も発熱した。男性はその後、回復の兆しがでてきて、電話取材にも応じられるようになったが「一時は死も覚悟するほど苦しかった。息子は子どものころにぜんそくがあり、肺炎も経験している。検査で陽性なら隔離されてうつす心配はなかったはずで、申し訳ない思いでいっぱいです」と話している。

拡大さいたま市保健所の入り口に相談は「電話のみ」と書いてあるが、いつも話し中でなかなかつながらない=2020年4月21日(筆者撮影)

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筆者

松浦新

松浦新(まつうら・しん) 朝日新聞さいたま総局記者

1962年生まれ。NHK記者から89年に朝日新聞社に転じる。くらし編集部(現・文化くらしセンター)、週刊朝日編集部、オピニオン編集部、特別報道部、経済部などを経て現在は東京本社さいたま総局に所属。共著に社会保障制度のゆがみを書いた『ルポ 老人地獄』(文春新書)、『ルポ 税金地獄』(文春新書)、『負動産時代』(朝日新書)などがある。

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