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日仏「コロナ支援」比較~日本は世界から見放された!

経営者は今こそ「Withコロナ」から「ポストコロナ」を見据えた新戦略を考える時だ

神山典士 ノンフィクション作家

 「えっ!この状況でも営業を続けているの?」

 それは「驚き」に近い感覚だった。

 緊急事態宣言が発令されて約2週間。休業要請は出ていないとはいうものの、多くのレストランは顧客や従業員の感染を恐れて店を閉めている。その状況の中で、「グランメゾン」と呼ばれるとある高級フランス料理店が、いまも営業を続けていると聞いて驚いた。

 都心の一等地で席数約60。調理場とサービスを合わせれば優に30人からのスタッフがきびきびと働く老舗だ。

 もちろんめったに足を向けられないほどメニューは高価だけれど、客を納得させるシックな内装の店の家賃は月額およそ300万円。人件費や光熱費等を合わせれば、固定費だけで月に1000万円を優に越える。

 いつもなら日々予約で満卓の店内を見回して、オーナーシェフは「家賃は3日で稼ぎだせ」と言うのが口癖だった。創業以来通いつめる大勢のファンに支えられた、フランス料理界の頂点に君臨する店なのだ。

「雇用を守るため休みに休めない」

 ところが現状では、これまで日本の食文化をリードしてきたこの店に対しても、政府からスタッフへの休業補償は無く、経営者に対しても支援金は企業で200万円、個人なら100万円。しかもそれらは全て一時金だ。

 無利息の融資枠を設けたとはいうものの、今申し込んでも面談開始が6月末と言われる。個人でこれだけの規模の店を維持しようとしたら、いくら内部留保があっても経営は立ち行かない。

 そんな状態でも、このシェフはかたくなに雇用を守り、外出自粛の最中でも予約来店する顧客があるかぎり店を開け続ける。「スタッフの雇用を守るためには休むに休めない」という事情もかいまみえる。

 もちろん苦境に立っているのはこの店のシェフだけではない。しかし、全国の経営者の苦悩を思えば、安倍首相の言葉が虚しく響く。

 「休業に対して補償を行っている国は世界に例がなく、わが国の支援は世界で最も手厚い」

 本当なのか? 世界一の料理文化を誇るフランスの事情はどうなのか? 

 取材でパリを訪ねた折りに何度か足を運んだ市内北駅近くにあるレストラン「シェ・ミッシェル」のオーナーシェフ、河合昌寛氏にその事情を聞いてみることにした。ここは星こそもたないが、一階と地下の約70席はいつも地元客で満員の人気店だ。

拡大Catarina Belova/Shutterstock.com

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筆者

神山典士

神山典士(こうやまのりお) ノンフィクション作家

1960年埼玉県生まれ、信州大学人文学部卒業。96年『ライオンの夢、コンデ・コマ=前田光世伝』にて小学館ノンフィクション賞優秀賞。2011年『ピアノはともだち、奇跡のピアニスト辻井伸行の秘密』(講談社、青い鳥文庫)が全国読書感想文コンクール課題図書選定。14年「佐村河内事件報道」により、第45回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)雑誌ジャーナリズム大賞受賞。「異文化」「表現者」「アウトロー」をテーマに様々なジャンルの主人公を追い続けている。最新作は『知られざる北斎』(幻冬舎)、『もう恥を書かない文章術』(ポプラ社)『成功する里山ビジネス~ダウンシフトという選択』(角川新書)等

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