2020年04月29日
世界通貨基金(IMF)は4月14日の「世界経済見通し(WEO)」で2020年の世界経済の成長率をマイナス3%と予測した。新型コロナウイルスの影響で1月時点から6.3%ポイントも下方修正したのだ(1月の予測はプラス3.3%)。ゲオルギエワ専務理事は「大恐慌以来の経済悪化」になる懸念があると指摘したのだった。
先進国地域全体ではマイナス6.1%。アメリカはマイナス5.9%、ユーロ圏はマイナス7.5%、日本はマイナス5.2%という予測だ。
新興市場国・発展途上国も大きく成長率を落とし、全体でマイナス1.0%、中国は1.2%、インドは1.9%としている。中国とインドはかろうじてプラス成長だが、2019年の中国6.1%、インド4.2%から大きく成長率を落としている。
衆知のように、中国は2011年までは年平均で10%を超える成長率を達成。その後、成長率を落としたものの、6~7%の成長率を2019年までは維持していたのだ。インドも2010年代は年平均6~7%の成長率を維持してきたのだった。高度成長を続けてきた中国もインドも1%まで成長率を落とすとの見通しなのだ。
IMFのチーフエコノミスト、ギータ・ゴピナ氏は、世界経済の総生産が今後2年間で9兆ドル(約970兆円)減る可能性があると述べた。IMFのWEOは、イギリス・ドイツ・日本・アメリカ等の各国の「迅速かつ大規模な」対応を称賛する一方で、景気後退を免れる国はないだろうと指摘している。
IMFは新型コロナウイルス感染が年内に封じ込めるとして2021年にはプラス6.0%とV字回復の軌道を描くと想定している。しかし、新型コロナウイルスの感染終息時期を含めて、希望的観測に過ぎないのであろう。
そして、新型コロナウイルス感染者数は2020年3月中旬から急増しており、4月15日現在、アメリカで77万3792人、スペインで20万210人、イタリアで18万1228人、ドイツで14万1672人、イギリスで12万4743人、フランスで11万4657人と特に欧米で急増している。
日本は1万1118人と今のところ他国に比べ少ないが、このところ、急速に増加しており(4月22日の時点で前日比377人増)、死者数も増えてきている(4月22日の時点で死者数277人、前日比17人増)。予断を許さない状況だといえるのだろう。
しかもコロナウイルス感染はIMFの希望的観測のように、決して封じ込まれていない。
アメリカの疫病対策センター(CDC)のレッドフィールド局長は4月21日、新型コロナウイルス感染拡大の第2波が今年冬、アメリカを襲う見通しだとし、インフルエンザの季節と重なるため、今回よりもおおきな影響が及ぶ可能性があると警告している。氏はワシントン・ポスト紙のインタビューで「次の冬に米国に到来する新型ウイルスの襲撃は、われわれが今回経験したよりも厳しいものになる可能性がある」と語ったのだった。
こうした感染の急速な拡大に対して、各国はそれぞれ厳しい政策を取ってきている。感染者数が1万人をこえたニューヨーク州では、自宅待機令(ロックダウン)に3月22日踏み切っている。それから1か月たっているが、感染は収まらず、逆に大きく拡大してきているのだ。
ロックダウン開始日=3月22日のニューヨーク州の感染確認数は1万5168ケース(死者114人)、1か月後の4月21日の感染確認数は24万7543ケース(死者1万4347人)とむしろおおきく増加してきているのだ。ただ、ここにきて、感染者や入院患者数が多少減少してきており、「流行のピークの波が平らになった」「感染のスピードがゆっくりになった」等の声が聞こえるようになっている。
コロナウイルスの影響は、2019年第4四半期にも既に顕在化しており、日本の10~12月のGDPは前期比今年マイナス6.3%と5期ぶりのマイナスに落ち込んでいる。市場予想のマイナス3.8%、前期0.5%を大きく下回る数字だったのだ。
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