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経済学の重鎮たちが賛同する「日銀資金100兆円で株価対策」に異議あり!

マイナンバー、低所得家計への緊急融資……経済学者たちの「コロナ提言」を採点する

原真人 朝日新聞 編集委員

「感染防止・医療支援」は総額25兆円超のうち、たった1.8兆円

 提言は3月中旬、小林、佐藤両氏が中心になってまとめ、国内の有力経済学者たちに賛同を呼びかけた。賛同を拒んだ学者、賛同するが個別項目について留保した学者など、対応はさまざまだったようだ。4月24日時点で提言に参加したのは46人(以下の一覧表参照)。

【共同提言の発起人】
小林慶一郎・東京財団政策研研究主幹
佐藤主光・一橋大教授
【賛同者44名】
青木玲子・公正取引委委員/池尾和人・立正大教授/伊藤元重・学習院大教授/乾友彦・学習院大教授/岩井克人・東京大名誉教授/大垣昌夫・慶応大教授/大津敬介・慶応大教授/岡崎哲二・東京大教授/小川一夫・関西外語大教授/奥野正寛・東京大名誉教授/小黒一正・法政大教授/小塩隆士・一橋大教授/川口大司・東京大教授/清滝信宏・米プリンストン大教授/工藤教孝・名古屋大教授/小峰隆夫・大正大教授/齊藤誠・名古屋大教授/西條辰義・高知工科大教授/土居丈朗・慶応大教授/八田達夫・アジア成長研究所理事長/星岳雄・東京大教授/松山公紀・東京財団政策研所長/森信茂樹・東京財団政策研研究主幹/原田喜美枝・中央大教授/嘉治佐保子・慶應大教授/渡辺智之・一橋大教授/瀬古美喜・武蔵野大教授/宮川努・学習院大教授/清水順子・学習院大教授/井伊雅子・一橋大教授/神谷和也・神戸大経済経営研究所長/三浦功・九州大教授/グレーヴァ香子・慶應大教授/田渕隆俊・中央大教授/家森信善・神戸大教授/黒田祥子・早稲田大教授/木村福成・慶應大教授/田近栄治・一橋大名誉教授/三野和雄・京都大特任教授/釣雅雄・岡山大教授/小西秀男・ボストンカレッジ教授/桃田朗・立命館大教授/三重野文晴・京都大教授/佐藤泰裕・東京大教授

 8項の提言は大きく3ジャンルに分類される。

《1》 感染拡大の防止 (提言①~④)
《2》経済的打撃の軽減 (提言⑤~⑦)
《3》 アフター・コロナの構造変化促進(提言⑧)

拡大

 政府の補正予算で決定的に足りないのは《1》「感染拡大の防止」のための予算だ。

 4月22日、BS-TBS「報道1930」に出演した際、ご一緒した志位和夫・共産党委員長が「感染防止拡大のための医療現場支援とPCR検査の拡充のための予算がケタ違いに少ない」と指摘し、早急の財政面での手当てが必要だと提言していた。

 本当にその通りである。なにしろ4月末に成立見込みの補正予算案に盛り込まれているPCR検査機器整備や病床・軽症者受け入れ施設の確保、人工呼吸器など医療設備整備、応援医師派遣への支援などに使う「支援交付金」の総予算が、わずかに1490億円なのだ。

 これとは別に地方自治体が地域の実情に合わせてコロナ対策に使える「地方創生臨時交付金」に1兆円を積んでいるが、医療機関などへのマスク優先配布(953億円)、人工呼吸器・マスクなどの生産支援(117億円)、評判が悪い全世帯への布マスク2枚配布(233億円)、治療薬候補アビガンの確保やワクチン・治療薬の研究開発支援(総額655億円)と、どれも危機対応としては意外なほど小ぶりだ。

 以上のように、感染拡大を防ぎ、医療現場を支え、治療薬を開発するための本丸予算は合計1.8兆円にすぎない。補正予算総額25.7兆円のうち、わずか7%だ。

 一方、《3》「アフター・コロナの構造変化促進」向けには、補正予算に約2.8兆円を盛り込んでいる。たとえば、旅館やレストランで使えるクーポンなどを発行する「Go To キャンペーン事業」には約1.7兆円もの予算が計上されている。

 足もとでは医療現場が今にも崩壊しそうで、今日明日の生活にも事欠く人が増えているなかで、まったく「あさっての方向」の予算なのだ。

 という問題を指摘したうえで、今回の経済学者たちの提言の採点評価は《2》「経済的打撃の軽減」の提言⑤~⑦を中心に展開してみたい。

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筆者

原真人

原真人(はら・まこと) 朝日新聞 編集委員

1988年に朝日新聞社に入社。経済部デスク、論説委員、書評委員、朝刊の当番編集長などを経て、現在は経済分野を担当する編集委員。コラム「多事奏論」を執筆中。著書に『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)、『日本「一発屋」論 バブル・成長信仰・アベノミクス』(朝日新書)、『経済ニュースの裏読み深読み』(朝日新聞出版)。共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)、「不安大国ニッポン」(朝日新聞出版)など。

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