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新型コロナが浮き彫りにした埼玉県の「医療過疎」の厄介な実態

ことは埼玉だけの問題ではない。カギを握る「在宅+オンライン」診療

松浦新 朝日新聞さいたま総局記者

入院待ちの患者が相次いで死亡

 埼玉医大の高度救命救急センターで働いた経験から、救急病院が重症者の治療に専念できるように、2010年、川越市に「川越救急クリニック」を開いた上原淳院長はこう話す。

 「昨年、うちに来る患者が他で断られた回数は10回ぐらいまで減っていましたが、新型コロナの流行で、発熱患者の場合、20回が珍しくなくなっている」

拡大川越救急クリニックの上原淳院長。ゴーグルとガウンは医療用がないため工業用で代用している(筆者撮影)
 上原院長は、麻酔科医として病院の手術も手伝うため、病院側の事情もわかる。救急で発熱患者が運び込まれても、PCR検査はすぐにはできないため、新型コロナに感染している前提で治療する必要がある。他の入院患者にうつらないように部屋を別にして、医師らもガウンやフェイスシールドなど、感染防護具を身につけなければならない。防護具は原則として患者ごとに使い捨てる必要があるが、いまは病院でも不足している。

 感染者を入院させると、ほかの入院患者と別にしなければならず、スタッフの負担は重くなる。院内感染がわかって、外来や手術を中止する病院も数多く出ている。また、新型コロナにばかり注目が集まっているが、ほかの病気が待ってはくれるわけではない。日本の医療者は過重労働が当たり前になっており、余裕はない。新型コロナに向き合う医療機関は、多くのことを後回しにしているのが現状なのだ。

 こうした状況のなか、埼玉県ではPCR検査で陽性と判定され、自宅で入院を待っていた患者2人が相次いで亡くなった。上原院長は「埼玉県は病院不足でベッドが追いつかない。たらい回しと同じ構図です」と指摘する。

感染者の把握が少なすぎる

 こうした状況は埼玉県だけの問題ではない。陽性者が各地で急増しているため、程度の差こそあれ、全国にも広がっている。

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筆者

松浦新

松浦新(まつうら・しん) 朝日新聞さいたま総局記者

1962年生まれ。NHK記者から89年に朝日新聞社に転じる。くらし編集部(現・文化くらしセンター)、週刊朝日編集部、オピニオン編集部、特別報道部、経済部などを経て現在は東京本社さいたま総局に所属。共著に社会保障制度のゆがみを書いた『ルポ 老人地獄』(文春新書)、『ルポ 税金地獄』(文春新書)、『負動産時代』(朝日新書)などがある。

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