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労働者を解雇させず、直接補償する緊急政策が必要だ

迅速で実効性ある経済対策がなければ、より多くの命が失われる

鈴木剛 全国コミュニティ・ユニオン連合会 会長/東京管理職ユニオン 執行委員長

 5月4日、政府は新型コロナウイルス感染症対策本部で、全国を対象に緊急事態宣言の期限を5月末日まで延長することを正式決定した。

 しかし、記者会見の中で安倍首相は、経済補償について、家賃負担軽減や雇用調整助成金拡張など追加対策を「速やかに」行うと表明するにとどまった。これまでの施策が不十分で遅延している上に、具体的な実効的支援策が明らかにされなかったことに強い危機感を覚える。

政府の経済補償は全く不十分である

拡大緊急事態宣言の期限延長を発表する安倍首相の会見=5月4日、首相官邸

 すでに、相談活動を行っている労働組合のもとには、経済的困難に直面した人々からの切実な相談が殺到している。生活支援を行う市民団体には、仕事と住まいを失った人々の命に関わる相談が相次いでいる。中小企業経営者や自営業者も危機的状況に直面している。

 新型コロナ感染対策のための医療をはじめとした対策と並行して、適切な経済対策を講じなければ、より多くの命が失われることになりかねない。

 安倍首相の会見をテレビの画面で垣間見ながら、私は、新型コロナウイルス感染拡大を理由として理不尽な退職を迫られている介護福祉士の女性の相談を受けていた。全国ユニオンに加盟する「ユニオンみえ」からは、妊娠中の派遣労働者が雇い止めにされ、社宅から出ていくことを執拗に迫られているという報告がされていた。

 様々な労働団体・市民団体で活動する人々から深刻な報告がされている。政府、政策に関わる全ての人々は、真剣に深刻な現場の実態を知るべきである。そして、迅速で実効性のある施策を講じるべきである(なお、本稿では、主に雇用問題について論じる。住居や生活保護に関する施策も併せて重要である)。


筆者

鈴木剛

鈴木剛(すずき・たけし) 全国コミュニティ・ユニオン連合会 会長/東京管理職ユニオン 執行委員長

1968年生まれ。早稲田大学社会科学部卒。在学中は早稲田大学雄弁会などで活動。テレビ報道番組制作会社(「ザ・スクープ」、「ニュースステーション」)を経て、「協同労働の協同組合/ワーカーズコープ」で活動。2006年より若年非正規労働者のフリーター全般労働組合に関わり、副執行委員長を務める。08年に東京管理職ユニオン執行委員、その後、書記次長、書記長を経て、現在、執行委員長。他に全国コミュニティ・ユニオン連合会(ナショナルセンター「連合」加盟)会長、一般社団法人ユニオン運動センター専務理事、労働組合が再建した企業等の役員を務めている。著書に『中高年正社員が危ない』(小学館101新書)、『解雇最前線・PIP襲来』(旬報社)、『社員切りに負けない』(自由国民社)、共著に『フリーター労組の生存ハンドブック』(大月書店)がある。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです