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香港経済の再生への道筋

デモ、米中貿易戦争…「アフターコロナ」の経済回復はSARSとは異なりそうだ

高島大浩 ジェトロ香港所長

注目される9月6日予定の立法議会議員選挙

 一方、オフィスやホテル、商業施設向けの不動産市場の事情は異なるようだ。英系不動産サービス大手のサヴィルズは、「グレードAといわれる高級オフィスの賃貸は年内に2割程度下落する」と予測している。

 この背景には、中国大陸企業の動きがある。親会社の所在国・地域別にみると、地元香港系以外では、中国企業が1799社と最多となっており、2018年に日本を上回ってから存在感を増している。香港島中心部の中環、金鐘辺りでは、大陸企業がオフィスを席巻して賃料の高騰を招き周辺に波及させてきた。中心部のホテル、飲食や小売りの店舗も年間5000万人に上る大陸からの来訪客によって支えられてきた。

 そういう意味では、9月6日に予定される立法議会議員選挙に向けて、まだまだ香港の民主化運動は続くことが確実視されており、これを嫌う大陸客の戻りは鈍く、店舗向け物件の低迷は避けられないだろう。

 市況下落に伴う調整を歓迎する声がある一方、不動産が香港経済全体に与える影響は大きく経済全体への波及とともに、下落をチャンスと見た者による寡占や比較的傷が小さい大陸系資本の更なる進出を危ぶむ声も聞かれる。

世界に先駆け起きたデマによる買い占め

 香港政府は、域内の感染者がまだ5人だった旧正月初日にあたる1月25日に感染症への警戒レベルを3段階中最上位となる「緊急」へ引き上げた。日本と同様、いわば外出自粛の要請であり、大手スーパーなどの小売店舗は旧正月初日を除けばほぼ通常通り営業された。警戒レベルの引き上げとともに、まずはマスクやアルコール除菌剤、塩素系消毒剤の商品棚が空っぽになった。次いで、主食である米やティッシュペーパー、トイレットペーパーが売り切れた。それでも、防疫用品以外は商品の補充は追いついていた。

香港再生2拡大売り切れるトイレットペーパー

 大陸よりも短い香港の旧正月は1月29日に明け、ステイホームの市民生活が始まった。誰もが、旧正月中に伴う物流の停滞は戻ると信じていた。ところが、香港政府の水際対策の強化により、広東省との間の出入境拠点が次々と閉じられ、同時に、中国政府による外出制限を目的とした旧正月の延期措置が表明され、市民は大陸から物資の流れが途絶えると思い込んだ。

 2月に入ると市民が米やトイレットペーパーを買い求めた。香港では環境対策としてレジ袋は有料であり、商品を裸のまま持ち歩く姿が常態化している。トイレットペーパーを持ち歩く姿が、アナウンス効果として助長され、多くの市民が買いに走った。香港政府が、再三にわたり大陸との物流を制限しておらず、物資の供給に問題はないと冷静な消費行動を求めても、人々は行政長官の発言よりもSNSを信じた。この騒動は、マスクを除けば供給が飽和する2月下旬まで続いた。

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筆者

高島大浩

高島大浩(たかしま ・ともひろ) ジェトロ香港所長

1990年、ジェトロ入構。ナイジェリア、英国、タイに駐在。対日投資部長などを経て、2019年7月から現職。

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