松浦新(まつうら・しん) 朝日新聞経済部記者
1962年生まれ。NHK記者から89年に朝日新聞社に転じる。くらし編集部(現・文化くらしセンター)、週刊朝日編集部、オピニオン編集部、特別報道部、東京本社さいたま総局などを経て現在は経済部に所属。共著に社会保障制度のゆがみを書いた『ルポ 老人地獄』(文春新書)、『ルポ 税金地獄』(文春新書)、『負動産時代』(朝日新書)などがある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ウイルスが高齢者ねらい撃ち、男女の割合が逆転、「自粛警察」の弊害も
感染者の確認が減ったように見える新型コロナウイルスだが、埼玉県の約1000人の感染者を分析すると幾つかの特徴が浮かんでくる。まず、女性の医療従事者と高齢者のウエイトが高まり、男女の割合が逆転した。また、4月上旬の緊急事態宣言後に「主役」だった中年男性の感染確認が急減する一方、院内感染にブレーキがかからない。
「おうち」で暮らすステイ・ホームの「自粛生活」には、一定の効果はあったようだが、いよいよ動きが見えなくなったウイルスが、抵抗力が落ちた高齢者をねらい撃ちにする構図も透けてみえる。
埼玉県で確認された新型コロナ感染者は5月20日現在で延べ997人。19日には陽性者の発表が64日ぶりにゼロになり、一段落したような雰囲気も漂っている。しかし、その中身を子細に見ると、3月中に判明した100人では13%だった70歳以上の患者が、5月(113人)では32%と急増しているのが目につく。
その一方で、減ったのは50代と60代で、3月の40%から17%へと急減した。これに対し、30代は3月の8%から5月には18%と、倍以上になった。男女の割合は、3月に60%と多数だった男性が5月には44%まで減り、男女が逆転している。
3、4月の「主役」だった東京に近い県南地域に住む40代から60代の男性会社員が減り、かわって30代、40代で女性の医療従事者が増えたかたちだ。30代女性の13人のうち9人は医療従事者と発表された。また、40代女性9人のうち4人が医療従事者で、1人は介護職だった。