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新型コロナ。埼玉県1000人の患者が示す感染者の変化と院内感染の怖さ

ウイルスが高齢者ねらい撃ち、男女の割合が逆転、「自粛警察」の弊害も

松浦新 朝日新聞経済部記者

5月になって際立つ院内感染の多さ

 5月の感染者で際立つのは院内感染の多さだ。80歳以上の26人のうち16人はもともと入院中だったと発表された。

 院内感染との戦いは長期にわたる。比較的早く多数の感染者が確認された所沢市の「所沢明生病院」は4月4日に対策に着手し、患者と職員の計24人の感染を確認して、5月11日に診療再開にこぎつけた。

 この病院から転院した患者が発端となったとされる「所沢ロイヤル病院」では、4月8日に最初の患者を確認したが、5月16日にも新たに5人の感染者を確認している。病棟の1階から始まった感染は2階にも広がり、患者と職員の計28人に加えて、その家族ら4人にも感染が広がった。この間、感染した3人の入院患者が亡くなっている。所沢市では、障害者施設の「皆成会」でも20人を超える感染が確認されている。

 所沢市以外では、さいたま市北区の「彩の国東大宮メディカルセンター」で18日までに31人の入院患者と職員らの感染が確認された。患者3人が亡くなったと公表された。新座市の堀ノ内病院(11人)、飯能市の飯能靖和病院(8人)でも、5月に入っても感染が確認されている。

拡大院内感染で30人以上の感染者が確認された「彩の国東大宮メディカルセンター」=さいたま市北区(筆者撮影)

経過観察が難しい病院

 医療関係者は、原因として無症状の感染者の存在を指摘する。慶応大学病院は4月に入院前の一般患者に対して行ったPCR検査で、268人中7人(2.7%)の陽性者がいたと公表した。新型コロナは無症状の患者からも感染する。

 国立感染症研究所は4月20日、新型コロナの感染者がわかった時の対応である「積極的疫学調査の実施要領」を改訂し、PCR検査の対象になりやすい「濃厚接触者」として、発症した日の2日前まで対象を広げた。せきなどの自覚症状がなくても、人にうつす可能性があるということだ。気づいた時にはもう遅いことがありえる。

 老人ホームのように長期間暮らす施設は、入所してから2週間様子をみてから他の入所者と接触するといった対応もとっているが、入れ替わりが多い病院では、すべての新規入院患者を個室に入れて経過観察するのは難しいだろう。

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筆者

松浦新

松浦新(まつうら・しん) 朝日新聞経済部記者

1962年生まれ。NHK記者から89年に朝日新聞社に転じる。くらし編集部(現・文化くらしセンター)、週刊朝日編集部、オピニオン編集部、特別報道部、東京本社さいたま総局などを経て現在は経済部に所属。共著に社会保障制度のゆがみを書いた『ルポ 老人地獄』(文春新書)、『ルポ 税金地獄』(文春新書)、『負動産時代』(朝日新書)などがある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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