メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

どこまでもアベノミクス的なコロナ対策~官邸官僚が陥った「規模ありき」の罠

第2次補正予算は第1次をしのぐ大規模メニュー。首相は「世界最大の対策」と誇るが…

原真人 朝日新聞 編集委員

1次補正への不満、2次ですべて採用

 2次補正のメニューは、1次補正で「少ない、足りない」と国民から批判されてきたものに対して、あらかた応えた内容となった。

 たとえば、休業で立ちいかなくなっている事業者への資金繰り支援が足りないと言われてきたので、これを強化する。強い要望のあった「家賃支援給付金」制度も創設する。制度はあるが機能していないと批判されてきた雇用調整助成金には拡充のための予算を盛り込んだ。仕事を失ったフリーランスの人すべてを支援できるよう「持続化給付金」を拡充する。雇用や事業支援にざっと16兆円を用意した。

 医療崩壊危機も大きなテーマだ。なんとかここまで切り抜けてきたものの、医療現場への政府支援が圧倒的に足りないといわれてきた。今回、総額3兆円近くを医療体制強化のために計上した。医療用マスクや防護着の現場への提供など、医療従事者たちに物資と資金の両面で支援する。

 低所得のひとり親世帯への給付金の創設など、これまで寄せられた国民の不満や批判を片っ端から予算化した。そんな印象を受ける補正予算だ。

 ただ、現場からの要求に耳を傾け、緻密に積み上げて設計した、という感じは受けない。乱暴にいえば、それぞれの項目に「つかみ金」のような巨額予算をあて、それを束ねたような、そんな予算案といえる。

 象徴的なのはコロナ対策の「予備費」だろう。10兆円もの巨額予算が計上されている。

 予備費は、地震や大雨被害など不測の事態が起きたときに、すぐに復旧・復興のために財源が必要になるのに備え、各年度の当初予算に設けておくものだ。国会での事前審議が必要なく、内閣の判断ですぐに使える。ふつうは各年度で5000億円ほどが積まれている。

 10兆円というのは、いくら何でもけた違いに大きすぎる。コロナ対策のためとはいえ、政権にフリーハンドを与える予算額としては破格だ。予算は項目ごとに国会で審議され、必要なのか、使い道は正しいかなどが点検される。そのプロセスを経ないまま巨額予算の執行権が政権に与えられてしまうのは問題だ。

 評判が悪い「アベノマスク」のような予算執行のケースが増えることが考えられる。466億円もの予算がかかるのに、当初、国会での審議なしで全世帯配布が決まった。製造元への契約も随意契約で不透明だ。

拡大アベノマスク

 10兆円の規模ともなれば「第3次補正予算案」を改めて国会に提出すればいい話だ。緊急性があるコロナ対策なら、野党も全面的に緊急審議に応じ、早期成立に協力するだろう。安倍政権に「白紙委任の小切手を渡せ」というのでは納得できない話である。

 どうやら政権の支持率が急落しているという事情が関係しているようだ。3次補正予算まで見通せば、国会の会期延長が求められることになる。だが首相はそれを望んでいない。黒川前検事長の定年延長や賭けマージャンに世論の批判が強まり、国会が延長されれば野党からの政権批判で、再び焦点をあてられてしまう。河井案里参院議員の公職選挙法違反疑惑もくすぶっている。だから、国会を早く閉じたいのだ。

 そこで浮上したのが、第2次補正予算を膨張する策だったのではないか。国会延長を避け、しかも支持率の回復も期待できる。そう考えると、不要不急の10兆円予備費の意味もわかってくる。事実上の3次補正の前倒し計上なのだ。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

原真人

原真人(はら・まこと) 朝日新聞 編集委員

1988年に朝日新聞社に入社。経済部デスク、論説委員、書評委員、朝刊の当番編集長などを経て、現在は経済分野を担当する編集委員。コラム「多事奏論」を執筆中。著書に『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)、『日本「一発屋」論 バブル・成長信仰・アベノミクス』(朝日新書)、『経済ニュースの裏読み深読み』(朝日新聞出版)。共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)、「不安大国ニッポン」(朝日新聞出版)など。

原真人の記事

もっと見る