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米中が「香港カード」を持ち合う中で、日本企業はどういきるか

アフターコロナの処方せんだけでは解けない、香港とのビジネスの向き合い方

高島大浩 ジェトロ香港所長

アメリカ系企業の一部にはシンガポールへの移転に関心

 他方、欧米系企業の場合は、中国全土をカバーしたり、ASEANのみならずオーストラリアからインドまで管理したりするケースもあり、シンガポールが立地競合先となる。香港から日本を統括する欧米や大陸系の外資系企業も300社、支援機能を有する企業も500社を数えており、香港は対日ビジネスの拠点ともなっている。

 仕事柄、日本への投資や拠点設立を呼び掛けており、香港デモに伴う情勢不安を背景に日本への移転をアメリカ系企業幹部に呼び掛けたところ、「国際金融センターの条件は、行政機関との書類手続きを含めて英語でビジネスができることだ」と返ってきた。実際、昨年10月に行われた米国商工会議所の調査では、香港からの資本や拠点の移転を検討している企業が31社もあり、その半数がシンガポールを候補地として挙げ、日本という回答は無かった。

香港の行方拡大街頭演説も始まり政治の季節へ

日本の農林水産物・食品輸出で香港は世界1位

 金融や貿易といった従来から強固な日本と香港の関係に加えて、ここ10年の間で急速に太い幹となり2大成長分野となったのが、農林水産物・食品の対香港輸出と訪日インバウンドである。

香港の行方拡大農林水産省、JNTO資料から作成

 日本の農林水産物・食品輸出額は、昨年、全世界に向けて9121億円に上る。このうち、22%の2037億円を香港に輸出しており、2位中国を500億円以上離し、15年連続の首位となっている。もとより香港は、食料自給率が1%程度と需要の多くを中国産に依存してきた。日本産は、所得が向上した香港の消費者に受け入れられて、中華食材に欠かせない、なまこ、あわび、貝柱といった乾物も含めて幅広く扱われている。ウイルス禍の厳しい状況の中にあっても日本からの第1四半期の輸出は、前年同期比で20.7%減少しているが、引き続き世界1位の輸出先の座を維持している。

 また、香港市民にとって、最も身近な外国料理は日本食であり、日本食レストラン数は1400店舗を数える。タイ、イタリア、韓国といった他国レストランを千店舗以上引き離している。この数字には、香港企業がフランチャイズ方式で多店舗展開する回転すし屋やラーメン店などが含まれるものの、ミシュラン星付きが7店舗とハイエンドでも存在感を示している。

香港の行方拡大日常に日本があふれる

1400店超える日本食レストランは政府高額補助金の恩恵に

 コロナウイルス禍のステイホームにより食品を取り扱うスーパーの好調さに比して、外食産業の今年第1四半期の売り上げは前年同期比でマイナス31.2%と顕著に落ち込んでいる。

 日本食レストランにとっても例外ではない。感染拡大当初、香港資本の和食店経営者によれば、「火を通さず人が手に取って調理をする刺し身・すし」が嫌われたという。会食需要の減退も相まって、高級すし店や高級割烹が直撃を受け、宿泊客のいないホテル内や観光客が来ない繁華街の店舗では、一時休業も見受けられた。5月末に至るまで、日本人が経営もしくは調理するレストラン数店舗が閉店を余儀なくされており、今後も楽観視出来ない状況が続く。

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筆者

高島大浩

高島大浩(たかしま ・ともひろ) ジェトロ香港所長

1990年、ジェトロ入構。ナイジェリア、英国、タイに駐在。対日投資部長などを経て、2019年7月から現職。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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