荒井寿光(あらい・ひさみつ) 知財評論家、元特許庁長官
1944年生まれ、1966年通産省(現経済産業省)に入り、防衛庁装備局長、特許庁長官、通商産業審議官、初代内閣官房・知的財産戦略推進事務局長を歴任。日米貿易交渉、WTO交渉、知財戦略推進などの業務に従事。WIPO(世界知的所有権機関)政策委員、東京大学、東京理科大学の客員教授を歴任。現在は、日本商工会議所・知的財産戦略委員長を務める。(著書)「知財立国が危ない」「知財立国」(共著)
コロナ医薬品特許権プールへの期待と課題
安倍総理は5月25日の記者会見で、「ウイルスに対する治療薬やワクチンを、透明性の高い国際的な枠組みの下で途上国も使えるようにしていく特許権プールの創設を、6月に予定されているG7サミットで提案する」と述べた。G7サミットは9月以降に延期されたが、麻生副総理も4月のG7財務大臣会議で同じ構想を提案しており、この構想は日本政府の方針だ。
世界各国で治療薬やワクチンの開発が進められており、治療薬レムデシビルは米国に続き、日本でも承認され、いよいよ治療に使われる段階に入った。コロナは、ブラジル、インドに続きアフリカ諸国での感染爆発が懸念されており、途上国でもコロナ医薬品がスムーズに使われることが必要であり、安倍総理の提唱はタイムリーだ。
構想の内容は明らかにされていないが、次の仕組みが考えられる。
①G7の政府などが資金を拠出して国際基金を作る
②その国際基金は色々な製薬メーカーから途上国向けの特許の実施権を買い上げる
③それに基づき後発薬メーカーなどに治療薬やワクチンを製造してもらう
④製造された治療薬やワクチンを途上国に無償又は廉価で提供する
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