種苗法改正、ネットで拡散する反対論への反論
種子会社が法外な種子代を要求して農業を支配しているわけではない
山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
種子法廃止
2018年種子法(主要農作物種子法)が廃止された。同法は、米、麦、大豆(主要農作物という)について、国や都道府県が優良な種子を安定的に生産・普及するという法律だった。
1952年に作られたこの法律は、米麦が主要食糧として国民の食生活に大きな比重を占めていたころの立法であり、近年では農政上の位置づけは地味なものだった。私の30年の農水省勤務で一度も話題になったことはなかった。種子法と聞いて、次の種苗法の間違いではないかと受け取ったくらいだ。
種子法が規制改革推進会議等で取り上げられたのは、「民間の品種開発意欲を阻害している」という理由だった。規制改革推進会議のメンバーの方々には申し訳ないが、私には、この提案がさほど重要だとは思わなかった。「言われてみると、そうかもしれないな。でも…」という印象だった。同会議の事務局がよくネタを探し出したものだと思った。
反対理由
しかし、種子法廃止に対して、大きな反対が起こった。
火付け役は、私もよく知っている元農水相だった。彼は裏のある人物ではないが、ときどき想像力を駆使してとるに足らないようなことを大問題にしてしまう(アメリカ英語に「連邦上の問題にする“make a federal case out of it”」という表現がある)。あるいは、大問題を作り上げるために、推測を重ねて起こらないようなことを事実と断定すると言った方が正確かもしれない。
種子法の廃止によって、外国産の種子に取って代わられ、主要食料の安定供給、食料安全保障に支障をきたすとか、やがて国民は遺伝子組換農作物を食べざるを得なくなるとか、というのが反対理由だった。
これについては、私は空想上の主張というか、嘘ではないかと思った。

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