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「ワイン県」のワイナリー危機 救うのは地域住民と消費者しかいない

コロナだけじゃない。チリやEU、コンビニに負けない日本ワインを守るのは私たち次第

大木貴之 LOCALSTANDARD株式会社代表、 一般社団法人ワインツーリズム代表理事

 5月の上旬あたりから、「飲食店に先にきていたダメージがワイナリーまできて大変な状況だ」という声が、地元のワイナリーから聞こえてきました。5月末に緊急事態宣言は解除されましたが、まちへの人の戻りは鈍く、私のお店の売り上げも昨年の半分も戻ってきません。ようやく日本のワイン文化の広がりを実感できるようになってきた「ワイン県やまなし」。そこにあるワイナリーで、今、何が起きているのか、報告します。

「ワイン県」のワイナリー危機 救うのは地域住民と消費者しかいない拡大=大木貴之さん撮影

あれから今日まで

 新型コロナウイルス感染症に翻弄(ほんろう)されながら、気がつけばすでに今年の半分がすぎてしまいました。

 山梨県甲府市で小さなお店を経営し、「ワインツーリズム(R)」を立ち上げて、地域を少しでも自分たちの望む姿にしていこうという活動を仲間とともに10年以上続けてきた経緯から、自分たちのまちや地域の実情をお伝えできたらと前回、「論座」に寄稿させていただいたのが3月でした。その時点では、お店の3月、4月の予約がすべてキャンセルになっている状況でした。

 3月の中旬までは、「飲んで応援」や「食べて応援」といった気運があり、お店の売り上げ自体への影響は、後から考えれば軽微なものでした。4月になるとお店の売り上げは前年比約90%減少しました。想像以上に衝撃でした。みなさんのお給料が突然一桁下がってしまったことを想像していただくと、衝撃度が少し伝わるかもしれません。

 まちから人が消えてしまったこの間は、売り上げがほとんどなく、一体いつまでお店がもつのか常に不安でした。お店を存続させるために、限定の酒販免許の申請、持続化給付金、雇用調整助成金、金融機関からの借り入れなどの手続きに追われました。どうしても不慣れなことと、複雑な手続きのものもあり、かなり時間をとられましたが、休業させているスタッフの生活のことなどを考え、できることはすべてやってあげたいと思っていました。

「ワイン県」のワイナリー危機 救うのは地域住民と消費者しかいない拡大がんばってワインをあけても、いつもの勢いの半分もありません=大木貴之さん撮影

飲食店から酒屋、ワイナリーへと影響は連鎖する

 15年ほど前から山梨県産ワイン専門で提供している私のお店で、過去これほど山梨県産のワインが動かなかったことはありません。まちから人が消え、お店にお客さんが来ないということもありますが、日々何本もあけていたワインがここまで動かなくなると、当然ですが酒屋やワイナリーに仕入れに行くことができなくなります。飲食店から酒屋、そしてワイナリーへと影響の連鎖が、日本ワインを取り扱う全国のお店で発生するようになりました。

 山梨県のワイナリーは、東京の飲食店への出荷の割合も高く、海外に輸出しているところもあります。しかし、それらの需要は当分見込めません。これまで何年もかけて構築してきた販路が一気に停止している状況なのです。

 山梨のワイナリーといってもひとくくりにすることはできません。飲食店が大手チェーン店や家族と従業員で営業するお店、個人が独りで営業するお店など経営形態が様々なように、ワイナリーも様々です。大手資本のワイナリー、地元資本で家族を中心に何人も従業員を抱えるワイナリー、夫婦で営むワイナリーなど多様です。

 営業形態も、品質を高めしっかりとブランディングして都内のレストランに卸しているワイナリーや、テーブルワインとして地元スーパーなどの量販店にも卸しているワイナリー、そしてワインだけでなく観光ブドウ園を併設するワイナリーなどもあります。

 今回の新型コロナウイルスによる影響をワイナリーに聞いてみると、主に都内のレストランを売り上げの中心にしているところに大きな影響が出ているようです。スーパーなどの量販にも卸していたワイナリーには、巣ごもり消費の恩恵を受けてトータルの売り上げに甚大といえるほどまでは影響が出ていないところもあります。また、小さなワイナリーでは、そもそもの出荷量が少ないため、個人の買い支えによって飲食店の減少分を少しカバーできたところもあります。

 しかし、総じて多くのワイナリーが大きな影響を受けており、不安を抱えながら、ともかくお金を借りる、持続化給付金や雇用調整助成金を得るなどして存続の道を探っている厳しい状況だという声が挙がってきています。

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筆者

大木貴之

大木貴之(おおき・たかゆき) LOCALSTANDARD株式会社代表、 一般社団法人ワインツーリズム代表理事

1971年山梨県生まれ。マーケティング・コンサルタント会社を経て地元山梨へ。2000年に当時シャッター街だった山梨県甲府市に「FourHeartsCafe」を創業。この「場」に集まるイラストレーター、デザイナーや、ワイナリー、行政職員、民間による協働で「ワインツーリズムやまなし」(2013年グッドデザイン・地域づくりデザイン賞受賞)を立ち上げ、山梨にワインを飲む文化と、産地を散策する新たな消費行動を提唱。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科に入学しワインツーリズムを研究。卒業後は、山形、岩手と展開。ワインに限らず地場産業をツーリズムとして編集し直し、地域の日常を持続可能にしていく取り組みを続ける。

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