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「ワイン県」のワイナリー危機 救うのは地域住民と消費者しかいない

コロナだけじゃない。チリやEU、コンビニに負けない日本ワインを守るのは私たち次第

大木貴之 LOCALSTANDARD株式会社代表、 一般社団法人ワインツーリズム代表理事

良いところで前年比40〜50%減。悪いところだと80%減

 「そもそも設備投資して借り入れが多いところも多い。年内こんな調子なら多くのワイナリーが潰れる」

 こんな声が山梨のワイナリーから聞こえてきます。山梨のワイナリーの基本はやはり家族経営ですが、今回特に家族を中心にして従業員を何人も抱えているところが、とても厳しい状況になっています。

 山梨を代表するようなワイナリーもこうした経営形態に含まれ、地元のブドウである「甲州種」からつくられる白ワインを多く生産しています。何年もかけて「甲州種」の白ワインの品質を上げて特化させ、少しずつ単価も上げて、都内の飲食店への出荷量も増え、海外にも毎年出荷できるようになってきている状況でした。

 しかし、今回の新型コロナウイルスの影響で、都内の飲食店は軒並み休業となり、海外への輸出もストップし、地元の品種「甲州種」を支えてきたこうした経営形態のワイナリーが大きな打撃を受けています。

 「なすすべがないからオンラインしかない」というワイナリーが多い状況ですが、ある程度の経営規模があるワイナリーでは、ネット注文などの通信販売による個人の応援消費だけでは、飲食店が休業して減少した分の補てんには及びません。また、この時期にある商談会や試飲会をはじめとした各種イベントもなくなっているので、一層厳しい状況となっています。もちろんこうした状況は地元資本のワイナリーだけでなく、大手資本のワイナリーも同様です。

 6月に入ると家族だけの小さなワイナリーからもかなり厳しい状況であるという声が聞こえるようになってきました。山梨の何社かのワイナリーにお話を聞くと、良いところで前年比売り上げ40〜50%減、悪いところだと80%減というお話でした。

「ワイン県」のワイナリー危機 救うのは地域住民と消費者しかいない拡大ワインが動かないので、瓶詰めしたくてもできないワイナリーや、リリースを遅らせるところも=大木貴之さん撮影

こんな時でもブドウを農家さんから買うことが大事

 山梨においてワインは地場産業です。山が多く平地が少なくお米がたくさんつくれない中で、単価の高い農業のために桑を栽培し養蚕をして絹を生み出していた時代がありました。山梨のワインは絹の時代が終わり、桑畑からブドウ畑に転換することによって盛んになりました。

 第1次産業であるブドウ栽培と、第2次産業であるワイン醸造、そして近年、私たちがつくり続けてきたワイン提供やワイン販売、そしてワインツーリズムなどの第3次産業と多くの事業者がつながっています。一本のワインに多くの県民が関わっているのです。だからこそ、その根本たる「甲州種」を使った白ワインが動かないことが、地域に大きな影響を及ぼす可能性があるのです。

 山梨のワインづくりの構造としては、周辺のブドウ農家のブドウをワイナリーが購入してワインにするという形態が今でも基本的な形であり、数多くみられます。それゆえ、新型コロナウイルスの影響でワインが売れなければ、必然的に農家への影響があるのではないか、と心配されるのです。

 「ブドウを購入する資金は大丈夫なのだろうか?」

 「売れないために瓶詰めしないとタンクが空かないので、今年の仕込みが減るのではないか?」

 こういった心配する声が実際に聞こえてきます。

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筆者

大木貴之

大木貴之(おおき・たかゆき) LOCALSTANDARD株式会社代表、 一般社団法人ワインツーリズム代表理事

1971年山梨県生まれ。マーケティング・コンサルタント会社を経て地元山梨へ。2000年に当時シャッター街だった山梨県甲府市に「FourHeartsCafe」を創業。この「場」に集まるイラストレーター、デザイナーや、ワイナリー、行政職員、民間による協働で「ワインツーリズムやまなし」(2013年グッドデザイン・地域づくりデザイン賞受賞)を立ち上げ、山梨にワインを飲む文化と、産地を散策する新たな消費行動を提唱。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科に入学しワインツーリズムを研究。卒業後は、山形、岩手と展開。ワインに限らず地場産業をツーリズムとして編集し直し、地域の日常を持続可能にしていく取り組みを続ける。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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