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地域交通の主役は「鉄道やバス」ではなく「自家用車」で良い!

自家用車利用を含む輸送分担率を公表しない国土交通省の摩訶不思議

福井義高 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授

2.EBPMはどこへ

 地域交通のごく一部に過ぎない乗合交通のみ取り上げ、しかも、数量的議論はほとんどない。これは、現在、国策として推進されている(ことになっている)EBPMと整合性がとれているのだろうか。

 先に述べたように、EBPMは「証拠に基づく政策立案」であり、それには基礎的データの開示が必須である。

 地域公共交通に限らず、旅客輸送に関して議論する際、移動手段別のシェアがどうなっているかは、現状を把握し、あるべき姿を描くうえで不可欠のデータである。ところが、国交省は現在、「輸送機関別輸送分担率」として、ナンセンスとしか言いようのないデータを開示している。図表1で直近(2018年度)との比較対象として2009年度を選んだのは、国交省が、翌2010年度以降、国内旅客輸送量に関して、自家用車利用分を除外したデータしか公表しなくなったからなのだ。

 図表2は、国交省がホームページで公開している2009年度及び最新のデータである2017年度の公表値と、筆者の2017年度修正値を示したものである。

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 国交省公表値によれば、輸送人キロでみると、自動車分担率が2009年度の66%から2017年度には12%に激減する一方、鉄道分担率は29%から72%、航空も6%から16%に激増している。輸送人員も自動車が74%から19%に激減、鉄道が25%から80%に激増している。

 しかし、自家用車利用を加えた修正値でみると、2017年度の輸送人キロのシェアは、自動車が63%、鉄道が30%、航空が7%、輸送人員のシェアは自動車が73%、鉄道が26%で、2009年度分担率とほとんど変わらない。

 いったい自家用車利用を含まない輸送分担率にどんな意味があるのだろうか。

 「中間とりまとめ」は「公共交通を地域の移動手段の中核と位置付け、その確保・充実を図る必要があると考えるべき」としている。そもそも、国交省は地域交通において、それが望ましいかどうかはともかく、自家用車利用から乗合交通への転移を推進している。

 だとするならば、現状の自家用車と乗合交通の分担率がどうなっているのかというデータに基づき、どのような分担率が望ましいと考えるのか、ある程度の目安を示す必要があろう。それ以上に、「公共交通を地域の移動手段の中核と位置付け」るという発想自体に現実性があるのかどうかを判断する前提ともなる。ところが、データ自体の公表が2009年度を最後に行われていないのが現状なのである。

 したがって、図表1の陸上輸送分担率の2018年度数値も筆者が推計したものである。

 2010年度以降、国交省が自家用車利用を含んだ分担率を公表していないのに、図表1でも図表2でも、なぜ、一門外漢にすぎない筆者が推計できたのか。それは、自動車輸送統計年報の付表(3)「自家用軽貨物自動車及び自家用旅客自動車に係る輸送量」に推計値がひっそり(?)と開示されているからである。

 ちなみに、自家用車利用を除外した国交省公表値は、毎年刊行される国交省鉄道局監修の『数字でみる鉄道』でも、欧米主要国との旅客輸送分担率「比較」に用いられているけれど、当然ながら、他国の数値には自家用車利用分が含まれている。国交省の欧米とのデータ比較に基づく議論にはご用心!

 いずれにせよ、基礎的データを欠いても、地域交通に限らず、旅客輸送のあるべき姿を描くことはできる。しかし、それがEBPMでないことだけは確かである。

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筆者

福井義高

福井義高(ふくい・よしたか) 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授

青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授。1962年生まれ、東京大学法学部卒、カーネギー・メロン大学Ph.D.、CFA。85年日本国有鉄道に入り、87年に分割民営化に伴いJR東日本に移る。その後、東北大学大学院経済学研究科助教授、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科助教授をへて、2008年から現職。専門は会計制度・情報の経済分析。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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