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コロナの経済危機、11月がヤマ場に

上期決算で業績悪化や破綻が表面化。400万人の休業者が失業者に変わる危機

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 新型コロナの感染者数が再び急増し、経済への打撃が懸念されている。日銀の金融緩和策や政府の財政支出によって何とか持ちこたえているが、今年度上期(4-9月)決算が出そろう11月には、企業の業績悪化が明確な数字で表れる。倒産や廃業のほか、約4百万人いる「休業中」の労働者が「失業者」に変わる事態が予想される。

今年度の売上高計画はほとんどの産業がマイナスに

 上のグラフは、日銀短観(6月調査)を元にリコー経済社会研究所が各業種の今年度の売上高計画をまとめたものである。業種別に明暗はあるものの、ほとんどの業種がマイナスに沈み、全産業平均は▲3.9%だ。例えば自動車は▲7.5%だが、すそ野が機械・金属・樹脂・電子・販売と広いだけに影響が大きい。

 世界経済も2009年のリーマンショックを上回る打撃を受けている。IMF(国際通貨基金)による今年の経済見通しは、日本が▲5.8%、米国▲6.6%、ユーロ圏▲10.2%など軒並みマイナスだ。

日米欧の金融緩和マネーで株価上昇

 このように世界全体がひどい不景気なのに、先進国の株価は3月ごろの落ち込みからV字回復している。とくに米国のハイテク企業が上場するナスダック総合指数は7月、連日のように史上最高値を付けている。

 その主因は各国の財政出動や金融緩和策である。米国のFRB(連邦準備理事会)は、格付けが下がった企業の社債の買い取りに踏み込んだ。投資家の安心感が強まり、他に行き場のない緩和マネーが株式に流入している。

 日銀も上場投資信託(ETF)を大量購入して株価を支えている。日経平均が急落した3月は約1兆5千億円、その後も毎月4千億円を買い、実体経済の悪化を緩和マネーで覆い隠している。

Foxeel/Shutterstock.com

 しかし、上期決算では、企業の潜在的な危機が表面化するのは避けられない。人やモノの動きが停滞したことで、かつてない減益や赤字が公表される。PER(株価収益率)などの指標において株価の割高感が意識され、投資家の「高所恐怖症」が強まれば、人為的な株高が続くかどうか、予断を許さない。

企業破綻に備えて2倍の信用費用を計上する3大メガバンク

 3月の危機発生時、金融機関は企業が求める返済期限猶予などの要請に応じた。しかし、この先も資金繰りを支えるのか、追加損失の発生を防ぐために支援を打ち切るのか、上期決算が重要な判断基準になる。

 金融機関はすでに2021年3月期に向けて、倒産や融資の焦げ付きに備えて多額の貸倒引当金や償却費などの信用費用(不良債権処理コスト)を見込んでいる。三菱UFJなど3大メガバンクは合計で前期比約2倍の1兆1千億円の信用費用を予定しているが、それでも「破綻の長期化に備えるには見積もりが甘い」という見方が出ている。

元々苦しい地方銀行は経営が行き詰まる可能性も

 深刻なのは元々経営が苦しい地方銀行である。2021年3月期の決算では約7割の地銀が減益を見込んでいる。人口減少や低金利という厳しい経営環境にコロナが加わる。

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