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激化する米中対立 「香港自治法」の影響は? 香港はどうなる?

米国の対中経済制裁はポーズか。「一国二制度」は形骸化、中国化が加速する香港

武田淳 伊藤忠総研チーフエコノミスト

制裁まで時間がある米国の「香港自治法」

 英国以上の反応を見せたのが、言うまでもなく米国である。米国は、香港国家安全維持法により香港の自治権が侵害されたと判断、香港に対する輸出管理上の特別待遇を撤廃する方針を示した。詳細は今のところ明らかになっていないが、米国が貿易制度の運営上、香港と中国本土とを同一視し始めたことは、ビジネス環境において香港が持つ中国本土に対する優位性が失われつつあることを意味する。

 その懸念をさらに強めたのが、米国による「香港自治法」の制定である。7月14日、トランプ大統領は「香港自治法」に署名、同法が成立した。これにより、米国は資産凍結や事実上のドル使用の制限という形で、中国に対する経済的な制裁を発動することが可能になる。

 制裁は2段階からなり、まず第1段階として、香港の自治・自由を侵害した個人や団体を対象に、ドル資産を凍結する。そして、第2段階は、第1段階の対象となる個人・団体と取引のある「米国外の」金融機関に対する、①米銀による融資・外貨取引・貿易決済の禁止、②米国内の資産凍結、③米国からの投融資の制限、④米国からの商品・ソフトウエア・技術の輸出禁止などである。

 こうした経緯や制裁内容を踏まえると、第1段階の対象は専ら共産党幹部となりそうであり、むしろ政治的な意味合いが強く、経済面で中国に大きなダメージが見込まれるのは第2段階の制裁であろう。

 ここで興味深いのは、制裁の発動までに要する時間の長さである。同法の定めでは、第1段階で対象を特定するまでの期間を90日以内、第2段階で対象の金融機関を特定するまで、さらに60日以内としている。そして、実際に制裁を発動するのは対象を決めてから1年以内、その間に状況が変われば制裁を取りやめることもできるとするなど、第2段階の制裁発動まで、かなり慎重に時間的余裕を持って進められるようになっている。

拡大香港でデモ行進をする若者たちは「トランプ大統領、香港を解放して」と書かれた横断幕を掲げていた=2019年9月21日、香港・屯門、峯村健司撮影

自国経済に悪影響を与えかねない米国の制裁

 なぜ、時間的余裕をもたせたのか? その意図は、今回の制裁の影響を整理すると見えてくる。

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筆者

武田淳

武田淳(たけだ・あつし) 伊藤忠総研チーフエコノミスト

1966年生まれ。大阪大学工学部応用物理学科卒業。第一勧業銀行に入行。第一勧銀総合研究所、日本経済研究センター、みずほ総合研究所の研究員、みずほ銀行総合コンサルティング部参事役などを歴任。2009年に伊藤忠商事に移り、伊藤忠経済研究所、伊藤忠総研でチーフエコノミストをつとめる。

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