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コロナウイルスが近現代を終焉させる。その後の世界経済は――

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 コロナウイルス感染者が全世界で1700万人に達し、死亡者も70万人に近づいている。14世紀(1347~51年)ペストが流行し、ヨーロッパの人口の3分の1が命を落したと言われているが、おそらく、それ以来の疫病の大流行だと言えるのだろう。当時とは異なって、医療体制がかなり整備されている為、死者数は当時の1億人前後と比べると、大きく減少しているが、感染の広がりという点ではペストの流行に似ているともいえるのだろう。

近現代の終焉

 14世紀のペストの大流行は西洋中世を終焉させ、15~16世紀以降、いわゆる「近代」が始まったのだった。大航海時代が始まり、マルティン・ルターなどによる宗教改革が始まったのもこの時代だった。ヴァスコ・ダ・ガマが喜望峰を回り、インドに到着したのはコロンブスに5年遅れの1497年。まさに大航海時代と共に西洋近代が始まったと言えるのだろう。

 アメリカ、インドを初め、アジア、アフリカの国々は次々とスペイン、ポルトガル、そしてフランス、イギリス等の植民地となっていく。スペインはアステカ帝国、インカ帝国を征服し、北米南西部からブラジルを除く南米全体を植民地とし、ポルトガルはブラジル、そしてマラッカを領有したのだった。

 イギリスは東インド会社を設立してアジアに進出し、インドに注力してゆく。1857年にはムガル帝国を滅ぼし、ヴィクトリア女王を皇帝とするインド帝国を成立させ、インドを植民地とした。又、1842年のアヘン戦争後、南京条約によって香港を植民地化、1860年には九龍半島に支配を拡大していった。

 一方、フランスはベトナム、カンボジア、ラオスを植民地化し、インドシナの一部を獲得していく。この時期、アジア諸国は欧米の植民地と化し、アジアで植民地化されなかったのは日本だけだったのだ。タイは形式的には独立を維持したが、事実上、イギリスの支配下にあった。

 第二次世界大戦後、アジアの国々は次々と独立してゆく。ベトナム1945年、フィリピン1946年、インドおよびパキスタン1947年、スリランカ及びビルマ連邦1948年、インドネシア1949年、そして1949年には中華人民共和国が成立したのだった。

 こうした中で、いわゆるナショナリズムが台頭し、それぞれの国は自らの歴史、文化を高々と掲げ、其のアイデンティティを強調していく。覇権国家アメリカも「アメリカファースト」を標榜し、国内政治・経済に注力していった。EUもまた、次第にそれぞれの国に分裂する傾向を強めていく中で、グローバルリズムのもとで国境を越えて、人、物、金が動いていった時代は徐々に終焉を迎え、ナショナルな動きが加速していった。

 そして、14世紀のペストの流行が「中世」を終わらせたように、コロナウイルス感染の拡大は、近現代の終焉をもたらすのではないだろうか。

拡大ETAJOE/Shutterstock.com

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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