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「どうするコロナ時代のシューカツ・働き方」の記事と録画をご覧ください

8月3日論座オンラインイベントをご紹介します

論座編集部

 「論座」は8月3日、オンラインイベント「どうするコロナ時代のシューカツ・働き方――若者は何を望む? おとなはどう応える?」を催し、YouTubeライブでお届けしました。その内容の一端を、こちらの記事でご紹介します。録画もご覧いただけますので、ぜひご視聴ください。

 イベントでは、若い世代の論客3人と、論座筆者2人が意見を交わしました。お笑いジャーナリストのたかまつななさん、政治アイドルの町田彩夏さん、日本若者協議会の古田亮太郎さんの若手3人と、論座筆者である連合会長の神津里季生さん、フリーライターの赤木智弘さんのお2人です。司会は「あさがくナビ」(朝日学情ナビ)編集長の木之本敬介が務めました。

「レールに乗らないとたいへん」な社会

政治アイドル・町田彩夏さん政治アイドル・町田彩夏さん

 話題のひとつになったのが、「レールに乗る」ことでした。日本には、大学などを卒業したばかりの若者を正社員として採用し、雇い続ける「新卒一括採用」「終身雇用」の慣行があります。

 こうした慣行のもとで働くことをどう考えるか。まず、町田さんから「私もレールには乗りたい。レールに乗らない人生は想像以上にたいへん」という声が上がりました。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、たいへんさを際立たせる結果になったという指摘もありました。数多くのフリーランスや自営業などの人たちが収入を失い、満足な補償も受けられず、窮地に陥ったからです。「『やっぱり大企業で、守られていてよかったね』と胸をなで下ろしている人は、いっぱいいると思う」と、たかまつさん。

乗っても強いられる「我慢」

日本若者協議会・古田亮太郎さん日本若者協議会・古田亮太郎さん

 一方で、「レールに乗った」と思っても、明るい未来が待っているとは限りません。神津さんは「少なからず、みんな我慢して勤めている」と表現しました。それに通じる指摘は若手の側からもありました。

 大学1年の古田さんは、若者の声を政治に反映させることをめざす「日本若者協議会」の労働政策委員会に所属しています。そのきっかけは、夜、電車に乗っていて「くたびれたおじさんたち」をみかけたことだったそうです。有給休暇の制度があっても思うようにとれない。みずからの意思にかかわらず転勤を強いられる。そんな働き方に違和感を示し、「いまから就職する人たちが求めていることのひとつに『自律性』がある」「コロナの渦中、労働という概念を見直していけたらと思っている。自分たちの生活を豊かにする『手段』として労働があればいい」と問いかけました。

 言いたいことも言えず、「我慢」を強いられるのは、就職してからだけではありません。

 町田さんは、大学院でジェンダーの研究をしており、就活生に対するハラスメント防止を求める署名を厚生労働省に提出したこともあります。しかし、OB・OG訪問の際に、「ジェンダーについて勉強しているということは、あまり言わないほうがいい」「署名を提出したことも言わないほうがいい」と言われたそうです。「自分が勤める会社でジェンダー不平等が起きていないかに目を向け、何かひとつ変えてみる。それが繰り返されれば、就活生も入りやすくなる」と、おとなと企業側にも努力を求めました。

お笑いジャーナリスト・たかまつななさんお笑いジャーナリスト・たかまつななさん

 たかまつさんは、7月いっぱいでNHKを退職し、「時事YouTuber」として活動する道を選びました。より自由な立場で、「若者に刺さる」社会問題解決型の番組をつくりたいと考えたからです。

 たかまつさんは「いきなり外に出てやるのは不安だと思うし、大企業に入ることは否定したくない」としつつ、これからの雇用は流動的になるという見方を示しました。30代、40代になって「これをやりたいのかも」と思い、転職するのも不幸なことじゃない。そもそも、大学を卒業する時に、やりたいことがみつかっている人はめずらしい。夢をみつけている人をみても焦らず、「いまの自分を全力で認めてほしい」と就活生に呼びかけました。

木之本敬介・あさがくナビ編集長木之本敬介・あさがくナビ編集長

社会保障・セーフティーネットを張り直せば

 新卒一括採用・終身雇用の慣行のもとでは、卒業時にレールに乗れないと、ずっと乗れないままになりがちです。とくに卒業時に景気が悪いと、企業は採用を絞り込むため、「就職氷河期世代」が生まれてしまう。バブル経済崩壊後や、リーマン・ショックのあとにもそうなりましたが、コロナ禍のもと、また似たことが起きないかと心配されています。

フリーライター・赤木智弘さんフリーライター・赤木智弘さん

 氷河期世代の赤木さんは、「バブル後の最初の就職氷河期のとき、人を減らしすぎたため、いつのまにか中堅社員がいなくなっていることに企業は気づいた。今回も(採用を)ゼロにはしないという方向でやっていくと思う」という見方を示しました。しかし、それは「非正規をたくさん雇い、いつでも彼らを切れるようにすることで、正社員を守る」態勢をつくりあげたうえに成り立っていること。最初の氷河期世代が、いつでも切れる「バッファー」として扱われていることを指摘しました。

 いまの日本は、働けない人は「しょうがないから、あきらめてくれ」という社会になっている。そんな社会だから、就職がここまで大きなトピックになる。そんな構造を変えるために、赤木さんは社会保障の充実を訴えました。

連合会長・神津里季生さん連合会長・神津里季生さん

 神津さんもまた、日本の課題としてセーフティーネットを挙げました。「職場に不満があれば転職する方がよい」と考える若者の割合は、日本ではスウェーデンよりもずっと少ない。その違いは、スウェーデンは国民を路頭に迷わせないセーフティーネットをもっているのに対し、日本ではそれが不十分だからだという見方を示しました。だから、新しいチャレンジをしたくても、我慢せざるをえないというわけです。

職場に不満があれば転職する方が良いと考える割合(国際比較)=内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」から作成した神津里季生連合会長の資料職場に不満があれば転職する方が良いと考える割合(国際比較)=内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」から作成した神津里季生連合会長の資料

 神津さんは「経営者、使用者のやりたい放題になっていないか」とも。労働組合があれば労働者も言うべきことを言えるが、組織率は2割を切り、「団結権」は宝の持ち腐れになっている。そんな状況に対し「悔恨の情」ももっていると吐露しました。

 コロナ禍を機に、セーフティーネットを張り直そう。働く側も「我慢しない」という思いでとりくんでいく。神津さんは、そんな決意を示しました。

社会的セーフティーネットに関する神津里季生連合会長の資料社会的セーフティーネットに関する神津里季生連合会長の資料

 ここでご紹介したのは、議論のごく一部です。詳細は録画をご覧ください。