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コロナ感染拡大をいつまで放置するのか?

国民に背き支持率低下の安倍政権

小此木潔 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

 新型コロナウイルス感染症の拡大阻止に有効な対策を打ち出せていない安倍政権。4、5月とは状況が異なるとの理由で感染防止を自治体や国民の努力にゆだねる姿勢が目立ち、「無策」も同然のまま感染拡大を放置しているように見える。このままでは感染者の増加による病床不足で医療崩壊を招きかねない。

 こうした現状に対する国民の不安が世論調査にも反映され、マスコミの世論調査で支持率の低下が甚だしい。新型コロナを甘く見てリスク評価を誤り、「Go To」キャンペーンなどでむしろ感染拡大の要因を作っている政権は、いつになったら現実や世論と向き合い、無謀な経済偏重路線の転換に踏み切るのか。

週に1万人近い新規感染者

 新型コロナウイルス新規感染者の増加が止まらない。米ジョンズホプキンス大学の新型コロナウイルス資料センターの集計によれば、8月2日から8日までの1週間に日本の新規感染者は9666人で、週当たりの人数としては過去最高となった。

 近隣に目をやれば、同期間中の新規感染者は中国808人、韓国237人、台湾2人、ニュージーランド2人である。感染がおさまっている東アジア、オセアニアの国や地域と比べると、日本の感染者数は突出して多いことがわかる。この1週間の死者の数は、日本の34人に対し、中国17人、韓国4人、台湾0人、ニュージーランド0人。

 同期間中の新規感染者数は米国が37万6692人で、これに比べれば日本ははるかに少ないが、フランスの1万39人、英国の6265人といった欧州主要国の水準にある。東アジア、オセアニアの中で日本の感染者数が不思議なほど多いのは、PCR検査が他の国々に比べてかなり少ないことと関係がありそうだ。検査で感染者を見つけ出し、隔離すれば、その分だけウイルスの伝播に歯止めをかけることができるが、検査数が不十分であれば、感染抑止も中途半端に終わってしまうからだ。日本が韓国や台湾のように検査体制をしっかりしていたら、と思わざるを得ない数字だ。

 厚労省の集計によると、8月5日現在の全国の入院患者数は計5116人で、7月1日の696人の7倍強にのぼった。このうち東京都の入院患者は1416人で、7月1日の約4.8倍に増加。大阪府は372人で、14.3倍に増えている。確保されているベッド数に対する入院患者の割合も上昇している。

 このペースが続けば、病床はたちまち埋まってしまうのではないだろうか。4、5月のように院内感染があちこちで起きたり、救急患者の受け入れ病院がなかなか決まらなかったりして、医療ひっ迫から崩壊を思わせる光景が再び出現しかねない。大学病院の経営は第一波の感染者受け入れでほぼ軒並み赤字を抱えているといわれるほど悪化している。医療従事者の賃金やボーナスが減り、東京女子医大病院のように看護師の大量離職まで起きているのに、それらの改善につながる抜本的な対策は打たれていない。巨額の予備費を確保している政権の目は、コロナとの戦いで頼みの綱であるはずの医療機関の支援にどれほど向けられているのか、疑わしい。

拡大沖縄県での新型コロナウイルス感染拡大を受けて、視察に訪れた橋本岳厚生労働副大臣(左)と、玉城デニー・沖縄県知事=2020年8月16日、沖縄県庁

 また、沖縄では特に医療のひっ迫で医療崩壊の懸念が高まっている。沖縄の感染増加は、米軍関係者からの感染と、「Go Toトラベル」など国内の旅行者からの感染によるものだ。いずれの要因に対しても政府は大きな責任を負っている。政府はようやく看護師などの派遣で支援すると表明したが、沖縄の医療を支えるために自衛隊の派遣を含めて最大限の努力を傾注すべきだ。

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筆者

小此木潔

小此木潔(おこのぎ・きよし) 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

上智大学教授。群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。富山、奈良、大阪、ニューヨーク、静岡、東京で記者をしてきた。近年は日本の経済政策や世界金融危機など取材。2009年5月から東京本社論説委員室勤務、11年4月からは編集委員も務め、14年4月から現職。著書に「財政構造改革」「消費税をどうするか」(いずれも岩波新書)、「デフレ論争のABC」(岩波ブックレット)。

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