トランプ就任後の通商政策
大統領就任後トランプは、TPPから脱退するとともに、安全保障を理由に自動車や鉄鋼・アルミの関税を引き上げると主張した。鉄鋼・アルミについては関税を引き上げ、一時ラストベルトに活気が戻った。
しかし、自動車に使われる高機能の鋼材については、アメリカ企業では対応できず、日本企業からの供給に頼っている。アメリカの鉄鋼大手は2019年から減産となり、期待された効果は得られなかった。
NAFTAについては、メキシコに進出した自動車企業が関税なしでアメリカに輸出するときには、アメリカで作られた部品を多く使うように要求した。今では、協定自体が改訂され、USMCAと呼ばれている。
また、オバマ政権がTPPで日本に認めた自動車関税の撤廃も、日米二国間の貿易協定では、認めていない。ただし、日本やEUに対して、鉄鋼と同じように自動車についても関税を引き上げると主張していたが、多くの消費者に影響することなどから、これまで実現していない。
中西部は、ラストベルトであると同時に、アメリカで最も農業の盛んなコーンベルトと呼ばれる地域である。農家は伝統的に共和党支持なので、農家の票を失うと当選できない。
トランプが日米貿易交渉を行ったのは、TPP11の発効で日本市場においてオーストラリアなどに対して劣ることとなった農産物の競争条件(牛肉についてはオーストラリア9%、アメリカ38.5%)を回復させるためだった。
また米中貿易戦争をしかけたものの、中国の大豆関税の引き上げにあって、中国への大豆輸出が激減し、トウモロコシと大豆の輪作を中心とする中西部の農業に大きな打撃を与えた。再選に与える影響を心配したトランプ政権は巨額の財政支援を農家に行うとともに、中国と交渉し、昨年末の米中合意で中国に農産物の輸入拡大などを約束させた。
コロナ対策と再選戦略
トランプの再選戦略の基本は経済の好調をアピールすることだった。このため3月上旬までトランプ米大統領は、新型コロナウイルスをうまくコントロールしており大変な事態だというのはメディアのフェイクニュースだと主張していた。経済に与える影響を無視しようとしたのだ。
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