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歴代最長政権を生み出した「アベノミクス」の真実~国民の未来を食い物にした罪

「アベノミクス」7年8カ月を総決算する

原真人 朝日新聞 編集委員

「やってる感」連発で政権延命

 安倍政権のレガシー(政治的遺産)とは何だったのか。

 数年前なら、多くの人がいくつかの政策の名をあげていたかもしれない。女性活躍、観光立国、地方創生、働き方改革……。だがコロナ・ショックと、政権のお粗末な対応ぶりを見たいまとなっては、冷静に評価すれば、それらでさえ大した実績をあげているわけではないと多くの人が感じていることだろう。

 安倍政権について鋭く分析を続けてきた御厨貴・東大名誉教授は最近こう言っている。

「(政策の)個々の中身よりは、(政権が長く)続いたってことにレガシーがある」(朝日新聞8月24日)

 私もその見立てに賛同したい。この政権のエネルギーはすべて「政権延命」に注がれてきたと思うからだ。

 安倍首相に政治生命を賭してもやりたい政策など、おそらく一つもないのではないか。

 第1次政権(2006~07年)を途中で放り出すことになったあの挫折の悔しさがバネとなり、こんどこそは少しでも長く権力の座に居座ろうと考えてきたのではないか。

 そうでなければ、毎年、新しい「1丁目1番地の政策」を掲げては使い捨てていくことなど、ふつうの政権ではありえない。

拡大第一次政権で突然辞任を表明した安倍首相=2007年9月12日

 第2次安倍政権以降は、ざっと下記の表のような「看板政策」的キャッチフレーズが打ち出されてきた。その多くはいつしか首相自身も話題にしなくなったし、国民からも忘れ去られる存在となっていった。

安倍政権が消費し続けた看板政策
2012年 アベノミクス「3本の矢」(異次元金融緩和、機動的財政運営、成長戦略)
2013年 待機児童ゼロ
2014年 女性活躍 地方創生
2015年 アベノミクス「新3本の矢」(GDP600兆円、出生率1.8、介護離職ゼロ) 1億総活躍社会
2016年 働き方改革 観光立国(訪日外国人2020年4000万人、2030年6000万人)
2017年 人づくり革命 全世代型社会保障
2018年 戦後日本外交の総決算

 御厨氏は「安倍政権は『やった感』より『やってる感』を重視する」と言う。見事にこの政権の本質をついた分析だと思う。

 ふつうの政権は政策を最後まで完遂させることによって国民の評価を仰ごうとする。しかし安倍政権はそうではなく、常に「いま目標めがけて努力しています」と国民にアピールすることに重きを置く。「やってる感」のほうが大切だというのだ。

 目標に向かっている途上であれば、その成否も実績も問われない。それでいて国民のために一所懸命に働いている雰囲気だけはアピールできる。そう考えると、安倍政権がとっかえひっかえ新しいテーマを繰り出してきた狙いも理解できる。

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筆者

原真人

原真人(はら・まこと) 朝日新聞 編集委員

1988年に朝日新聞社に入社。経済部デスク、論説委員、書評委員、朝刊の当番編集長などを経て、現在は経済分野を担当する編集委員。コラム「多事奏論」を執筆中。著書に『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)、『日本「一発屋」論 バブル・成長信仰・アベノミクス』(朝日新書)、『経済ニュースの裏読み深読み』(朝日新聞出版)。共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)、「不安大国ニッポン」(朝日新聞出版)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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