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歴代最長政権を生み出した「アベノミクス」の真実~国民の未来を食い物にした罪

「アベノミクス」7年8カ月を総決算する

原真人 朝日新聞 編集委員

日銀という「打ち出の小づち」

 そうやって実現してきた政権の長期化には重大な問題がある。

 1億総活躍とか、働き方改革、女性活躍のように、一つ一つの目標には、実現できるならしたほうが望ましいテーマも少なくない。とはいえ、政権に本気で目標を完遂させようという気がなく、一時的な人気取りのためだけにテーマを消費し続けるのなら、やはりマイナスのほうが大きい。成果が出るはずはないから結局、国民の期待を裏切り、政策目標への信頼を損なうことになる。国民のあいだに政治不信を増幅する弊害が大きいのだ。

 そして、もっと害が大きいのは、政策目標そのものがまちがっているケースだ。私は「アベノミクス」がそれに該当すると考えている。

 長期政権のあいだに乱発された看板政策は、何でもかんでも「アベノミクス」にくくられてしまうことも多い。ほとんどは安倍政権以前から課題として掲げられ引き継がれているものばかり。実は目新しさはそれほどない。

 何がこの政権ならではのオリジナルかといえば、最初の「アベノミクス3本の矢」の1、2本目、つまり異次元緩和と財政出動の組み合わせである。

拡大G20財務相・中央銀行総裁会議が閉幕し、会見する麻生太郎財務相(左)と黒田東彦・日銀総裁=2019年6月9日、福岡市中央区

 具体的には、政権が指名した黒田東彦総裁のもと、日本銀行に異次元の超金融緩和をやらせる。その一環として日銀に大量の国債を買ってもらう。これによって政府が借金を重ねても予算を膨張させても、国債価格が下落することを防ぐことができる(本質的にはどうなるかわからないのだが)。そうなると政府は安心して借金を重ねられるし、国民負担増や歳出削減のような不人気政策を採用しなくても何となくやっていける。

 政府と日銀が協調して政策行動をとることを「ポリシー・ミックス」(財政政策と金融政策を組み合わせてより大きな政策効果を発揮し、目的を実現させること)と呼ぶことがある。政府や日銀はそう言って現行政策を自賛している。

 だが、それはあまりに粉飾された表現だ。何のことはない。政府・日銀がやっていることは「財政ファイナンス」(日銀が紙幣を刷って財政を支えること)とか、「マネタイゼーション」(国債の貨幣化)と呼ばれる、先進国では「禁じ手」とされてきたやり方なのだ。

 この手を使えば、政権は「魔法の杖」や「打ち出の小づち」を手に入れたかのごとく自由自在に財源が生み出せる。しかも増税や歳出カットのような不人気策をとらなくてすむのだ。

 世の中は実際にはそんなに甘くはない。古今東西、財政ファイナンスを実施した国家はみな財政破綻やハイパーインフレという悲惨な帰結を迎えている。安倍政権はそんな危なっかしい手法を採用してみずからの政治的なエネルギーを蓄え、政権を延命してきた。

 これはいわば、「国民生活の未来」を犠牲にして長期政権を実現してきたようなものである。

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筆者

原真人

原真人(はら・まこと) 朝日新聞 編集委員

1988年に朝日新聞社に入社。経済部デスク、論説委員、書評委員、朝刊の当番編集長などを経て、現在は経済分野を担当する編集委員。コラム「多事奏論」を執筆中。著書に『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)、『日本「一発屋」論 バブル・成長信仰・アベノミクス』(朝日新書)、『経済ニュースの裏読み深読み』(朝日新聞出版)。共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)、「不安大国ニッポン」(朝日新聞出版)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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