アベノミクスの限界と失敗を超えて政策転換を
2020年08月30日
持病悪化のため8月28日の記者会見で辞意を表明した安倍首相は、レガシーを残そうとするかのように新型コロナウイルス感染症対策の今後のあり方を述べ、このとりまとめが辞任の節目となったことを強調した。しかし、この対策は従来の政策の延長という印象をぬぐえず、経済再生との関連について語られることもなかった。
このことは、安倍政権がコロナ対応に追われて場当たり的な政策を積み重ねていることを浮き彫りにするとともに、今後の政権に重い課題が残ったことを示すものだ。具体的には、コロナ対策を大胆に進めるための法制度の手直しや、思い切った政策を支える財政的な裏付けを急がなければならないということだ。しかも、それらは体系的な「コロナ対策と経済再生の両立」戦略のなかに位置づけられなければならない。
会見で首相は辞意を固めたタイミングについて、慶応病院で検査した8月24日の判断であったと述べるとともに、7月以降の感染拡大が減少傾向に転じたタイミングを選んだことを明らかにした。
「現下の最大の課題であるコロナ対応に障害が生じるようなことはできる限り避けなければならない。この1カ月あまりその一心だった。悩みに悩んだが、7月以降の感染拡大が減少傾向へと転じたこと、冬を見据えて実施すべき対応策を取りまとめることができたことから、新体制に移行するのであれば、このタイミングしかないと判断した」と述べたのである。
秋から冬にかけてのインフルエンザ流行期と新型コロナの感染拡大が重なれば、医療現場はパニックに陥りかねない。医療崩壊を防ぐには事前の綿密な対策が必要であるが、そのための対策をとりまとめることができたとし、今後の対策の骨格を決める節目であったことを首相は強調したのだった。
また、これまでのコロナ対策については、「見えない敵との戦いで全力を尽くさなければと思ってきた」「死者、重傷者は低く抑えることができた。経済への影響も低く抑えたつもりだが、反省すべき点はある」と、困難な中でも一定の成果を上げたと語った。
首相は今後の具体的なコロナ対策については、政府の対策本部の決定内容を引用する形で検査体制の強化などについて述べた。
重症化リスクが高いのは高齢者や基礎疾患のある人々であるから「一人でも多くの命を守るためには、こうしたみなさんへの対策が最大のカギとなる。冬に向けてはコロナに加え、インフルエンザなどの流行で発熱患者の増加が予想される。医療の負担軽減のため、重症化リスクの高い方々に重点を置いた対策へ今から転換する」「まずは検査能力を抜本的に拡充する。冬までにインフルエンザとの同時検査が可能となるよう、1日20万件の検査体制を目指す」と目標を掲げた。
また、高齢者施設や病院では、
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