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首相退陣会見で見えたコロナ対策と経済再生の課題

アベノミクスの限界と失敗を超えて政策転換を

小此木潔 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

 持病悪化のため8月28日の記者会見で辞意を表明した安倍首相は、レガシーを残そうとするかのように新型コロナウイルス感染症対策の今後のあり方を述べ、このとりまとめが辞任の節目となったことを強調した。しかし、この対策は従来の政策の延長という印象をぬぐえず、経済再生との関連について語られることもなかった。

 このことは、安倍政権がコロナ対応に追われて場当たり的な政策を積み重ねていることを浮き彫りにするとともに、今後の政権に重い課題が残ったことを示すものだ。具体的には、コロナ対策を大胆に進めるための法制度の手直しや、思い切った政策を支える財政的な裏付けを急がなければならないということだ。しかも、それらは体系的な「コロナ対策と経済再生の両立」戦略のなかに位置づけられなければならない。

拡大JR岡山駅前では辞任を報じる号外が配られた=2020年8月28日

今後のコロナ対策の決定が節目に

 会見で首相は辞意を固めたタイミングについて、慶応病院で検査した8月24日の判断であったと述べるとともに、7月以降の感染拡大が減少傾向に転じたタイミングを選んだことを明らかにした。

 「現下の最大の課題であるコロナ対応に障害が生じるようなことはできる限り避けなければならない。この1カ月あまりその一心だった。悩みに悩んだが、7月以降の感染拡大が減少傾向へと転じたこと、冬を見据えて実施すべき対応策を取りまとめることができたことから、新体制に移行するのであれば、このタイミングしかないと判断した」と述べたのである。

 秋から冬にかけてのインフルエンザ流行期と新型コロナの感染拡大が重なれば、医療現場はパニックに陥りかねない。医療崩壊を防ぐには事前の綿密な対策が必要であるが、そのための対策をとりまとめることができたとし、今後の対策の骨格を決める節目であったことを首相は強調したのだった。

 また、これまでのコロナ対策については、「見えない敵との戦いで全力を尽くさなければと思ってきた」「死者、重傷者は低く抑えることができた。経済への影響も低く抑えたつもりだが、反省すべき点はある」と、困難な中でも一定の成果を上げたと語った。

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筆者

小此木潔

小此木潔(おこのぎ・きよし) 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

上智大学教授。群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。富山、奈良、大阪、ニューヨーク、静岡、東京で記者をしてきた。近年は日本の経済政策や世界金融危機など取材。2009年5月から東京本社論説委員室勤務、11年4月からは編集委員も務め、14年4月から現職。著書に「財政構造改革」「消費税をどうするか」(いずれも岩波新書)、「デフレ論争のABC」(岩波ブックレット)。

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