「どこでも手洗い機」「機械部品の発注と受注を相見積もりなしにAIでマッチング」
2020年09月13日
多くのベンチャー企業が日々登場し退場していく。成功と失敗を分ける主要な要因は、そのビジネスに「社会変革の志」があるかどうかである。社会が抱える問題を少しでも解決したいという志が共感されれば、多くの協力者が集まり、資金支援を受けて成長できる。
そんな視点から、今注目されている2つのベンチャー企業の成長の要因を探ってみたい。
1社は、ポータブルの「水循環ろ過システム」を開発したWOTA社(前田瑶介社長)。もう1社は、「100年間変わらない」とされる部品調達の世界でイノベーションを起こしつつあるキャディ社(加藤勇志郎社長)である。
いずれも創業から数年しか経っていないが、コロナ禍を逆手にとって成長中だ。社長は2人とも20代後半、ともに東大卒後にベンチャーの世界に飛び込んだ。両社長に、ビジネスの現状と現状打破の意気込みを聞いた。
WOTA社は今年7月半ば、20リットルの水を循環ろ過して500回の手洗いができる「どこでも手洗い機(WOSH)」(下の写真)を開発した。水道がなくてもコンセントがあればOKだ。
WOSHは水を活性炭や逆浸透膜(RO膜)のフィルターでろ過し、紫外線や塩素で消毒する。水質はセンサーが監視し、WHOの水質基準に合うよう、ゴミ・細菌・ウイルス・微量の有機物まで99.999%を除去する。
「いわば浄水場を10万分の1に縮小し、専門職員の技をAIが実行している」と前田社長。
ふつう500人が水道で手洗いすれば数100リットルの水を消費する。20リットルを繰り返し使うWOSHの節水率は95%以上だ。レンタル制で月額2万2000円。11月からの本格生産を前に600台の先行予約を募集したところ、即日完売した。
同社の元々の「変革の志」は、「台風や豪雨の被災者に清潔な水を提供する」ことにあった。2019年に初の商品として開発したのが、100リットルの水で100人がシャワーを浴びられる「WOTA BOX」だ。
昨年、台風19号で千曲川が氾濫した長野市では、断水地区の避難所にシャワーセット を14台設置。2か月間でのべ9000人がシャワーを浴びた。今年7月の熊本県豪雨でも八代市に20台を設置した。
前田社長は「水害には想像を絶する気持ち悪さがある」という。乾燥した泥は土煙になって身体に付着する。避難所から学校や会社に通うには、汚れた体のままではつらい。感染症リスクもある。
自衛隊の風呂サービスには大量の水確保という問題がある。「避難所には感情を顔に出さなくなる子どもがいます。それが親と一緒にシャワーを浴びると、感情が一気に解放されて、泣き出したり笑い出したりします」
その「WOTA BOX」を小型化したのが、今回の「どこでも手洗い機」である。
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