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ボリス・ジョンソンは何を考えているのか?

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

ジョンソンの法案と北アイルランド問題

 昨年末の合意とは、端的に言うと、北アイルランドとイギリス本土の間に国境を引き、北アイルランドとアイルランドの間には国境を引かない(国境管理をしない)というものだ。事実上、イギリス連合王国の中で、北アイルランドだけEUの関税同盟に残ることとなる。(具体的には、北アイルランド国境では基本的にはEUの共通関税を徴収する。イギリス本土から北アイルランドに物資が入るときは通常は関税をとらないが、そこからアイルランドに輸出されるというリスクがある指定物品については関税を徴収することにした)

 ジョンソンの法案とは、このEUとの根幹部分の合意をご破算にして、北アイルランドとアイルランドの間に国境を引くというものだ。

 EUや歴代のイギリス首相が怒るのも当然だろう。アメリカでも、ナンシー・ペロシ民主党下院議長は、国際的な合意を守らないこのような政権とアメリカ政府が自由貿易協定を妥結しても、アメリカ議会は承認しないと言っている。アイルランド移民の血を引くバイデン大統領候補も、ブレグジットによって国境管理が復活し、ベルファスト合意を傷つけられることに反対している。

ジョンソンは何を考えているのか?

 ジョンソンの意図については、二つ推測されている。

拡大英国の欧州連合(EU)離脱にあたり、国民向けの録画演説で「新時代の幕開け」を強調したジョンソン首相=英首相官邸提供
 一つは自ら10月15日までと期限を切ったEUとの自由貿易協定交渉で、EUの譲歩を引き出そうという瀬戸際政策(brinkmanship)である。これだと自由貿易協定交渉をあきらめてはいない。

 もう一つは、この交渉の中でEUがイギリスの補助金などの政策や規則をEUと同様なものとするように要求していることに反発し、独立した主権国家は産業育成などを自由に行うことができるようにすべきであると考え、自由貿易協定交渉が決裂してもよい、つまり本気でEUと縁を切ろうとしていると思っているというものだ。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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