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菅発言が火をつけた「ワーケーション」狂想曲(上)

いつの間にかインバウンド観光の損失補塡に

常見陽平 千葉商科大学国際教養部准教授 いしかわUIターン応援団長  社会格闘家

JALの「社内働き方改革」から「顧客向け」に

 このワーケーションの旗振り役の一つは、JALである。もともと同社は2015年から働き方改革に力を入れ、テレワークの普及などに取り組んできた。

 ワーケーションは2017年7月に同社が社内の働き方改革の一環として始めたものだった。同社でテレワークの普及が進んだ過程で始まった。休暇期間中にテレワークでの業務を認めるという取り組みだった。同社のサイトによると「長期休暇取得の際、急な会議が入っても休暇の日程変更をしなくて良いだけでなく、休暇期間中に会社が協賛する地域でのイベントへの参加なども可能になりました」とある。前提として、有給休暇の取得を促す上での仕組みでもあった。同社は社員がワーケーションを実践し、自らをケーススタディとして各種パブリシティで発信している。さらには、出張中にも休暇をとることができる「ブレージャー」も提案された。

 これを顧客向けにも広げた。2020年夏現在、海外旅行は我が国も、海外も出入国の制限があり渡航を自由に行うことができないが、同社のサイトにはハワイでのワーケーションのプランが掲載されている。「海外ダイナミックパッケージ(航空券とホテルを組み合わせるプラン)」のコーナーにおいて「Flexible Worker 働き方も自由にする旅」というコンセプトを提示し、旅行と仕事を両立する旅をサポートするプランを紹介している。

 同サイトによると「平日の業務時間中はホテルで仕事をし、早朝や夕方以降は家族でハワイを満喫。家族みんなで行くハワイ旅行で、オンとオフを両立させ、より豊かな人生を目指しませんか。」というスタイルが提案され、夫はWi-Fiや電源が整ったホテルで日中仕事をし、他の家族はビーチや買い物を楽しんだ上で、仕事が終わった夕方は家族揃ってハワイの夕焼けと絶品料理を楽しむディナークルーズでハワイの夜を満喫するというものである。

 JALはこの他にも、ハワイや国内の自治体と連携した実証実験を行い、一部は報告会も行われている。関連する団体も立ち上がった。

 同社の他にこのコンセプトを推進してきた企業が、三菱地所である。三菱地所は2018年8月に、テナント企業に対してワーケーションの提案を始めた。和歌山県白浜町に、簡易オフィスを設置し、同社が管理する大都市部のテナント企業に呼びかけ、リゾート地での新しい働き方を提案した。他にも同社は、長野県軽井沢町などに拠点を設置した。

ワーケーションの場とするため、三菱地所が借りた「ITビジネスオフィス」内の部屋=2019年1月10日、和歌山県白浜町拡大ワーケーションの場とするため、三菱地所が借りた「ITビジネスオフィス」内の部屋=2019年1月10日、和歌山県白浜町

最初は「休みをとるために休暇先で仕事」だったが

 ただ、菅官房長官の発言で注目されたこのコンセプト

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筆者

常見陽平

常見陽平(つねみようへい) 千葉商科大学国際教養部准教授 いしかわUIターン応援団長  社会格闘家

一橋大学商学部卒業、同大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て2015年より千葉商科大学国際教養学部専任講師(2020年4月より准教授)。専攻は労働社会学。執筆・講演など幅広く活動中。『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社新書)、『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)、『「就活」と日本社会』(NHK出版) SNS  twitter yoheitsunemi  facebook yoheitsunemi

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