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私たち若者は、コロナ時代の就活をどう捉えるべきか

「何のための就職か」という問いを立て、自分と仕組みを見つめ直す

古田亮太郎 慶應義塾大学法学部政治学科1年

「好きなことだけで生きる」にも我慢が必要?

 先述の通り、そもそも私が「自分は何者なのか」「何のために生きているのか」に本気で向き合ったのは、進路を決める高校生の時である。

 当初は、将来自分の子を進学校に通わせられるくらい安定した生活を送るため、就職に良さそうな大学に行きたいと漠然と考えていた。というのは、自分を神奈川県内でも学費の高さで一、二を争う進学校に通わせてくれた家庭環境は、子どもの私にしてみれば当たり前に見えるが、世間的には簡単じゃないだろうというのが頭にあったからである。当たり前に見えていたのは、私立の小中高で12年間、同じ環境で過ごしてきたからこその平和ボケだと今では痛感している。

 しかし、そんなぼんやりした志ではいけないと危機感を抱き、成功者と呼ばれる先人たちがどのような生き方をしているかを知るため、本を読み始めた。そこで目にとまったのが、「好きなことだけで生きていく」という言葉である。古くからの慣習に縛られて、本当にやりたいことを見失いがちな現代人に疑問を呈すこの言葉は、心地よい感覚すらもたらした。きっと、電車でふと見かけるくたびれたサラリーマンは、その「現代人」の典型だろう。そんな姿にはなりたくない。単純に、楽しさを追求する生き方に憧れを抱いた。

 しかし、同時に違和感を覚えたのも事実である。なぜなら、この言葉を唱えるのも彼らが社会から認められる成果を残してきたからと捉えられるからである。つまり、「好きなことだけで生きていく」ためには、時にはやりたくないことも我慢してやらなくてはならないなどの苦難も伴うのではないかということである。電車でふと見かけたくたびれたサラリーマンも、まさにその苦難に立ち向かっている最中なのかもしれない。

 収入も楽しさも同時に得られればそれに越したことはないが、現実はそう甘くない。収入という尺度で結果を残さないと楽しさを追求できないのではないか。そう考えると、これから何を目指して生きていけばいいかますます分からなくなった。

楽しさか収入か、二分法を超える「私流」モノサシを

 目指す方向がわからず迷走期に入った私は、考える材料を集めるため、とりあえず動くことにした。

 その中で収穫だったのが、高校3年の終わりに初めて経験した地元・神奈川から大阪までのヒッチハイクである。具体的には、旅の途中で出会った方々と話す中で、大きな発見があった。それは、収入と精神的な豊かさは、必ずしも比例しないということである。

ヒッチハイクをする古田亮太郎さん=2020年1月、神奈川県海老名市の海老名サービスエリア。古田さん提供拡大ヒッチハイクをする古田亮太郎さん=2020年1月、神奈川県海老名市の海老名サービスエリア。古田さん提供

 たとえば、福岡県で居酒屋を営む30代の男女である。数人の従業員を抱えて店を切り盛りする彼らは、決してお金持ちではないものの、仲間を信じて懸命に働く日々は幸せだという。その上で、大工や食品販売の営業から水商売まで、様々な職から失敗と成功の両方を学んできたから今がある、と教えてくださった。そのほかにも、時価総額のような利益を表す数字より楽しさをベースに行動する人にたくさん出会うことができた。目先のお金稼ぎにとらわれることなく、夢を追いかけるその姿がどこか輝いて見えたのを今でも鮮明に覚えている。

 この発見は、収入が豊かさに直結するとなんとなく考えていた私には衝撃であった。加えて、前章で述べた葛藤を消化する触媒にもなった。

 収入が高いから、人気ランキングが高いからなどというわかりやすい数字で職を選ぶのも、1つの手段ではある。ただ、それらはあくまでも指標に過ぎず、労働を通して自己実現が達成されるかはまた別の話である。

 大切なのは、「自分は何者なのか」や「何のために生きているのか」に向き合う中で行動を重ね、ヒントを見つけること。その中で見えてくる武器や弱点を材料に、「何のために就職するのか」を定義し、戦う土俵(就職先)を決めることではないか。行動は、大学の授業はもちろん、私でいうヒッチハイクなど選択の余地は無限にある。楽しさか収入かという二分法に囚われず、それも踏まえて各々が「私流」モノサシを確立するのである。

 引き続き、行動と自問自答を重ねるなかでじっくりとモノサシを確立し、「何のために就職するのか」を定義していきたい。

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筆者

古田亮太郎

古田亮太郎(ふるた・りょうたろう) 慶應義塾大学法学部政治学科1年

若者の意見を政治や社会に届けるため、政策提言活動などを行う「日本若者協議会」で、労働政策委員会に所属。教育政策委員会の委員長も務めている。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです