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私たち若者は、コロナ時代の就活をどう捉えるべきか

「何のための就職か」という問いを立て、自分と仕組みを見つめ直す

古田亮太郎 慶應義塾大学法学部政治学科1年

「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への移行に備えて

 今、日本では「メンバーシップ型」主流の雇用システムが見直され、「ジョブ型」への移行が注目されている。

 その背景には、新卒で就職し、そこに勤め続けることを想定した「メンバーシップ型」の問題点として、就活が過熱して学業の妨げになることや、就職後のミスマッチが指摘されるようになったことがある。国際的にも労働生産性が低い現状を踏まえると、このような現行システムから、その職務にふさわしい人材を採用・配置する「ジョブ型」に速やかに移行するのは妥当といえる。

 とはいえ、これから就活に臨む世代にとっては、これが従来の「楽」な環境が失われるピンチであることも忘れてはならない。なぜなら、「メンバーシップ型」には、ある分野に特化した専門性やスキルがなくても、将来的にそれを身につけるポテンシャルさえあれば採用される側面があったからである。

 あらゆる課題が山積する今、すぐに移行が実現するとは考えにくいが、円滑な移行のための準備段階として、企業は若者にも配慮した仕組みを整えていくべきである。

 ここでは、移行期に直面する1人の若者として、求める企業の姿を述べたい。とくに、学生と社会人をつなぐ架け橋的存在となっているインターンについてである。

8月3日の論座オンラインイベントのようす拡大8月3日の論座オンラインイベントのようす

脱・キッザニア式インターンへ

 インターンの実施率・参加率は、年々増加傾向にある。

 リクルートの就職白書2020によれば、新卒を採用している企業のうち、19年度にインターンを実施した企業は95%と多く、学生の参加率においても20年卒は前年度から6.3ポイント増の約62%に及んだ。また、同白書では企業が実施する目的についても紹介されており、「仕事を通じて、学生に自社を含め、業界・仕事の理解を促進させる」が88%と最も多く、採用や入社後の活躍促進が目的の企業が増加している。一方、学生の状況を見ると、参加した学生の約7割が参加企業または同業種に入社を予定している。以上から、企業が行うインターンには、採用の意味で一定程度の効果があると考えられる。

 社会への長期的な影響を見据える場合、この現象をどう捉えるべきだろう。インターンに参加した期間を問わず、「業種」「仕事内容」を知ることができたという学生が6割を超えているのを踏まえると、「企業よし」「学生よし」なのかもしれない。しかし私は、「社会よし」は実現できていないと考える。なぜなら、インターン自体が、単なる職業体験になっているからである。

 具体的に、詳しいプログラムの概要に目をむけると、よくわかる。調査によれば、内容で最も多かったのは「通常業務ではなく、別の課題やプロジェクト」であり、企業の実施期間・学生の参加期間はともに「1日」が最多であった。参加したインターンの良くないと思った点を自由回答で尋ねた同社の別の調査では、「インターンシップ用の内容という印象が強く、仕事の全体像まではわからなかった」という回答が見られた。

 たった1日、しかも通常とは別の課題やプロジェクトに取り組んだところで、企業の実像が見えるはずがない。小学生を中心に職業体験を提供するキッザニアと変わらないのではないか。

 このような虚像を若者に見せている限り、就職後のミスマッチは減るはずがないだろう。企業にも事情があるとはいえ、段階的に「ジョブ型」へ移行するのであれば、そのフェーズに止まっている場合ではない。むしろ、働く経験を通して専門性を磨ける環境が早く構築されるべきである。

 実際に、ソフトバンクでは、働く経験を通して専門性を磨けるインターンを実施している。JOB-MATCHインターンといい、学生一人ひとりにスマートフォンやパソコンが貸与されるなど、社員とほぼ同レベルの環境が用意されているという。また、業務のコースはビジネスとエンジニアをあわせて20近くに分かれており、希望やスキルを踏まえて学生が配属される仕組みである。同社の人事採用部部長は、就職白書のインタビューのなかで、選考に進んだ学生の内定承諾率・入社後の活躍度合いは、ともに高いと答えている。

 もちろん、「ジョブ型」への移行は、男尊女卑や上下関係などの文化も含めて社会全体として変わる必要があるため、簡単にはいかないだろう。しかし、それらの垣根を超え、自身で選択できる仕組みを望む若者は、私も含めそう少なくないのも確かである。

 まずは、その足がかりとして、企業がインターンの仕組みから変えることで、より好きな仕事で生きる人で溢れる「社会よし」を実現させて欲しい。

論座が8月3日に催したオンラインイベント拡大論座が8月3日に催したオンラインイベント


筆者

古田亮太郎

古田亮太郎(ふるた・りょうたろう) 慶應義塾大学法学部政治学科1年

若者の意見を政治や社会に届けるため、政策提言活動などを行う「日本若者協議会」で、労働政策委員会に所属。教育政策委員会の委員長も務めている。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです